3.11の救援・復旧を支えた働くクルマとサムライ達の知られざる物語【救援物資編】

岩手県から「丸投げ」された救援物資の一括管理業務

 こうした中で、今では「岩手方式」と呼ばれる、救援物資の荷受け・仕分け・搬出の一括管理を成し遂げ、災害物流の手本となる仕事を成し遂げた人物がいる。

 社団法人岩手県トラック協会の佐藤耕造専務理事(当時)である。岩ト協の専務理事を13年間務めた佐藤氏は、かつては大手運送会社に長年在籍していた物流のプロフェショナルだった。

 岩手県の防災対策本部は、救援物資にまつわる作業の委託を岩手県トラック協会に打診。いってしまえば、その作業の実務の一切合財を「丸投げ」できないだろうかと相談した。佐藤専務理事は、県の職員が今回の震災での対応で手いっぱいであることもわかっていたので、これを快諾。

アピオに設けられた荷受けなどの受付
アピオに設けられた荷受けなどの受付

 震災直後、被災した運送事業者の社長に会った際、「専務、オラ何もねくなったじぇ、家族同様の運転手もいねくなった。専務、助けてけろ」といわれ、こういった多くの被災者のためにも今回の緊急救援物資の輸送を絶対に成功させると心に決めたという。

 ちなみに岩ト協傘下の運送事業者数は約580社、このうち約200社がなんらかの形で被災しており、経営者を含め50名近くが亡くなり、トラックも約500両が損壊した。

 岩ト協の黒澤康男会長(当時)は、これらの運送事業者の元を精力的に回り、親身になって相談に乗っていた。

的確かつスピーディ 物流のプロが見せた手腕

 いっぽう、緊急支援物資の「受け」の実務を任された佐藤専務理事は、かつて災害が起きたとき、緊急支援物資を送り出す仕事を何度もこなしており、このときの経験も活かしてプランづくりに着手。

 当初緊急支援物資の集積場となっていた倉庫から、新たな集積場として岩手産業文化センター「アピオ」を指定する。倉庫にはキャパシティの限界もあり、さらに荷受け・仕分け・搬出をスピーディに行なうには不向きだったからだ。

広大なコンベンションセンター「アピオ」を集積場に指定
広大なコンベンションセンター「アピオ」を集積場に指定

 岩ト協はすぐにアピオ2階に現地対策本部を設置。当時アピオで開催されていたイベントのブースを撤去しつつ、同時にトラックを入れて荷を降ろすといった、極めてスピーディな対応であった。

 コンベンションセンターであるアピオは、アリーナ部分だけで3600㎡と極めて広い上に、床の耐荷重も5トン/㎡あり、大型トラックが直接乗り入れることができるという、倉庫や体育館などでは真似できないメリットがあった。

 また、2階部分からは保管された物資がすべて見渡せるため、どこに何があるかひと目でわかるということも大いに役立った。さらに東北自動車道の滝沢ICのすぐ近くで、広大な駐車場があり、トラックステーションもすぐそばという地の利もあった。

24時間体制の荷受け、フォーク荷役をメインに据える 

 他の集積場では、緊急支援物資を運んできた大型トラックが荷降ろしのため何時間も待たされるということがざらにあったが、アピオでは24時間体制を敷くと同時に、フォークリフトを8両導入。

 パレットやロールボックスも大量に入れて、手積み手降ろしの時間的ロスを省き、省力化・効率化を徹底する。つまり、ウイングボディにフォークリフトでパレット積みという、今日のトラック輸送の理想形を実現したわけである。

ウイングボディとフォーク荷役でスピーディに荷積み荷降ろしを実現
ウイングボディとフォーク荷役でスピーディに荷積み荷降ろしを実現

 佐藤専務理事の他にも岩ト協職員の中には運送事業の現場で働いていた経験者がいたため、彼らが陣頭指揮に立って支援物資の一括管理を行ない、大型トラックから降ろされた支援物資は、すぐに仕分けされ、今度は主に中型トラックに載せ替えられて、県内12市町村、1000箇所以上ある集積場や避難所に送り出された。

 さらに入ってくる車両をゲートでチェックして荷物の確認をしたり、あるいは震災の混乱に乗じた「火事場泥棒」を防ぐため24時間の警備体制を敷くなど、その仕事ぶりは徹底していた。

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