「そんなの夢物語だろ」と思っていたら、いやいや「自動物流道路」、けっこうマジです!
自動物流道路とは、たとえば高速道路のような道路空間に物流専用のスペースを設け、クリーンエネルギーを電源とする無人化・自動化された輸送手段によって貨物を運ぶ新たな物流システムのこと。
「2024年問題」に象徴される物流危機、あるいはカーボンニュートラルなどに国をあげて対処しようという壮大なプロジェクトなんですが、ここにきて「あれよあれよ」という間にいろいろなことが動き始めました。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、イラスト・写真等/国土交通省・Cuebus株式会社
「自動物流道路」の最終とりまとめを受けた最近の動き
物流危機への対応として注目を集める自動物流道路だが、国土交通省は2025年7月末、「自動物流道路の在り方 最終とりまとめ」を公表した。
現在建設中の新東名高速道路の一部区間において2027年度までに自動物流道路の実証実験を実施することが決まっている。最終とりまとめでは、これに先立ち小規模な改良で実装可能な区間(先行ルート)での運用開始を念頭に、早期に整備・開発フェーズに移行できるよう、制度を含めた事業環境整備を促進していくべきとされた。
国交省はそのために2025年度の実証実験について公募を行なっていたのだが、9月に事業者が採択され、2025年11月19日~2026年2月28日まで「令和7年度自動物流道路の社会実装に向けた実証実験」を行なうことを決定した。
自動物流道路の実装に向けた技術的課題の検証および運用に必要な条件整理等を行なうことを目的としたもので、6つの「ユースケース」に沿ってコンセプト実証を行なう。
既存の施設・技術を活用して行なうことになるが、将来の絵姿の共通認識を持つために極めて重要とされ、主に搬送機器の走行性能の検証を中心に、必要幅員や積み降ろしなどインフラやシステムの検証も併せて行なう。その6つのユースケースは次の通りだ。
ユースケース1(拠点:無人荷役機器による荷役作業の効率化)
トラックの荷役(荷積み、荷降ろし、積み替え)の自動化に必要な床面積や作業時間を検証する。
ユースケース2(本線単路部:搬送機器の自動走行)
自動走行に必要な道路幅、走行環境、荷物への影響などを検証する。
ユースケース3(本線単路部:異常検知及び搬送機器の回避行動)
自動走行時に異常が発生した場合の検知能力や、それに対する回避行動における走行技術および制御の精度などについて検証する。
ユースケース4(拠点:搬入車両の到着予定情報の情報提供)
搬入車両の到着に合わせて搬送機器をスタンバイさせる運用について検証する。
ユースケース5(その他:搬送機器の運行管理)
搬送機器や荷物の運行状況を管理するためのシステム等について、その有効性などを検証する。
ユースケース6(本線単路部:搬送機器の通信安定性)
トンネルなど通信環境が不安定な状況でも自動走行が可能かどうか検証する。
実験場所は茨城県つくば市にある国土技術政策総合研究所の試験走路(実大トンネル実験施設を含める)で、採択された事業者より提案のあった場所での実証実験も可能としている。
JMS2025でも「自動物流道路」関連展示が?
例えば、都市型立体ロボット倉庫システム「CUEBUS(キューバス)」を提供するCuebus株式会社は、「ユースケース2」の搬送機器の自動走行の実施事業者に採択されている。
同社は超高密度保管でも全台同時稼働によって超取出効率を特徴とするロボット倉庫を開発しており、その開発で培った技術を活かして倉庫内の自動化に加えて「長距離輸送の自動化」という新たな領域に参画する。10月に開催されるJapan Mobility Show (JMS) 2025では、自動物流道路仕様に適合したCUEBUSの実物大モデルを先行展示することにしている。
また、「ユースケース2、4」に採択された成田国際空港株式会社と千葉県は、成田空港の「第二の開港」に合わせて空港と隣接道路・地域を含めた物流の自動化・標準化を図り、一体的な自動物流道路システムを構築するという。
成田空港は6月に策定した「エアポートシティ」構想で空港内貨物施設を起点とする自動物流道路を整備することを掲げており、成田空港周辺をフィールドとした搬送機器の自動走行に関する実験を行なうことにしている。
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