「無人運転専用の大型トラック」がベルギーの公道に!!　アントワープ港で史上初の実証運行

　アインライドが開発している、運転席のないキャブレストラックの公道でのデモ走行がベルギーで行なわれた。欧州の物流自動化に向けた大きなマイルストーンだという。

　自社の自動運転トラックによる自律型フリートの運営や遠隔操縦技術の開発も行なっている同社は、過去数年間に蓄積した運行データを活用してさらに大規模な展開を目指すとしている。

文／トラックマガジン「フルロード」編集部
写真／Einride

ベルギーの公道でキャブレストラックのデモンストレーション

　ドライバーの搭乗スペースがない「キャブレス」トラックは、いわば無人運転専用の貨物車だ。スウェーデンを拠点にキャブレストラックなどを開発しているアインライドは、ベルギーの公道で初めてとなる完全自律型（＝無人運行）の大型トラックの運行を行なった。

　ベルギー当局の枠組みのもとで安全性が検証され許可が与えられたもので、同国のアントワープ・ブルージュ港でデモンストレーションを行ない、トラック輸送の無人化・自動化において世界をリードする技術を示した。

　アントワープ・ブルージュ港理事会の代表を務めるヨハン・クラップス氏は次のようにコメントしている。

「アントワープはただの物流拠点ではありません。未来のモビリティを試験し、それを実現するための場所でもあります。アインライドが目指しているような、自律的で持続可能なアプリケーションは、競争と成長の原動力がイノベーションであることを示しています」。

　アインライドは欧州や米国などで既に顧客に代わって自律的に走行するトラックの運用を行なっている。

　今回のデモンストレーションはそうした技術を披露するためのもので、独自の自動運転スタックとなる「アインライド・ドライバー」と、自動運転専用で運転席のないキャブレストラック、フリート管理・監視プラットフォームとなるコントロールタワーなど先進的なハードウェアとソフトウェアを揃えた。

　同社のCTO兼ゼネラルマネージャーのヘンリック・グリーン氏は次のように話している。

「（ベルギーは）欧州では3カ国目となりますが、引き続き弊社は当局からの許可の取得と前例のない規模での実現を目指しています。本日アントワープで示したのは、公共セクターとプライベートセクターが同じ目標を共有し連携できるということです。

　アントワープ・ブルージュのような欧州の港湾は、物流の脱炭素化とサプライチェーンの確保を両立する上で欠かすことのできない施設です。

　欧州委員会も自動運転による物流の自動化はEUの競争力を維持するための鍵になると認識しており、革新と規制のバランスを図ることで、より安全で、より効率的で、より持続可能な物流を実現できることを、本日、お見せすることができました」。

無人トラックと遠隔操縦を世界に

　そのほかの関係者のコメントは次の通り。

ジャン＝リュック・クルッケ氏（ベルギーのモビリティ・環境・エコロジー担当大臣）：
「これは第1回目の『港湾の未来 ～自動運転モビリティサミット～』です。イノベーションと持続可能性が手を携えています。ベルギーで初めて自動運転レベル4のトラックに認可を与え、私たちはより安全な輸送に向けた新たな一歩を踏み出しました。我が国は未来のモビリティにおいて先駆的な役割を果たしています」。

アンドレア・デ・カンディド氏（欧州委員会研究イノベーション総局のコネクテッド・協調・自動モビリティ担当者）：
「本日、私たちがアントワープで目にしたものは、欧州の目標と完全に一致しています。すなわち、効率的で、安全で、持続可能で、スケーラブルな、革新的な技術を開発するということです。こうした先駆的なプロジェクトを通じて、未来志向の自動化されたモビリティソリューションにおける欧州の地位を強化していきます」。

ジャック・ヴァンダーマイレン氏（アントワープ港CEO）：
「この世界初の取り組みは、港湾の運営を自律化することが決して不可能ではないことを証明しています。自動運転ソリューションは私たちをよりスマートに、より安全に、より持続可能にしてくれます。これは、世界的な港湾であるアントワープ港の地位をさらに強化していくために必要なことでもあります。アントワープは貨物のゲートウェイであると共に、未来に向けたゲートウェイであることを目指しています」。

　アインライドは無人トラックやソフトウェアを開発するいっぽう、それを活用した世界最大規模の自動運転フリートを運営している。北米と欧州、中東で事業を行なっており、自社フリート事業を通じて集めたデータは自動運転技術の更なる開発と大規模化のために用いている。これは他社にはない同社の強みだ。

　また、キャブレストラックの遠隔操縦技術の開発も行なっており、一人のオペレータが複数のトラックを運転可能とする（トラック1台当たりの運転者を1人以下にする）ことで、物流を拡張可能で効率的にすることも目指しているという。