代替燃料車でも軽油ディーゼルに近いクルマに
LNGは、CO2排出係数が軽油より少なく、クルマとしてのCO2排出量は、ディーゼル車比で10~20%少ないとされている。液体なので、燃料タンクが占めるスペースはディーゼル車に近くなり、CNGなど気体の天然ガス車で劣位とされる架装性や重量などの課題も、ほぼ解消される。
ただし、LNGはマイナス162度で液化しているため、厳重に保温しなければならず、燃料タンクは断熱構造となっている。もちろん燃料配管も専用品である。それら以外は通常のトラックに近い使い勝手をもった代替燃料車となりうるのがLNG車の魅力で、それはオットーサイクルエンジンでもディーゼルサイクルエンジンでも同じだが、ディーゼルサイクル車は航続性能やドラビリ面でも、より通常のトラックに近いものとなる。しかも、LNGを使い切っても軽油だけで走行(時速20kmまで)できるのは、リスクヘッジの面からもメリットがある。
それだけに、日本初登場のFHガスパワードの実証運行がどのように評価されるのか、非常に興味深いところだ。現時点ではギガLNGVを含めてほとんどのLNG車はオットーサイクルを採用しているが、もしかしたら「LNG筒内直噴ディーゼル」が広がる可能性もあるかもしれない。
しかもウェストポート社では、この燃料噴射技術を、さらに水素エンジンへ応用する研究開発を進めており、今年5月にボルボ・トラックが開発を発表したFHベースの水素エンジン車でも、同社の技術を導入することになっている。環境省プロジェクトとは関係のない話ではあるが、今後の展開に注目したいところである。
ボルボ・トラック本社の海外営業部門責任者パー・エリック・リンドストローム氏は「世界有数のLNG輸入国である日本市場において、ボルボ・トラックの代替燃料ソリューションは、よりクリーンで静かな輸送の新たな可能性を切り開くことを確信しています。新しいテクノロジーが導入される際に最も重要なのは現地の法規に適合すること。我々のインポーターであるUDトラックスは、行政と連携しながら対応を進めています。今後もカーボンニュートラルソリューションを提供する製品開発に力を注いでまいります」とコメントしている。
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