日本のバケット付ブーム型高所作業車
我が国では昭和30年代(1955年以降)から、電力需要の拡大ならびに固定電話の加入が増えたことで、電気工事および通信工事の需要が増大しました。これらの工事は、作業者が直接電柱に登る、あるいは木で足場を組んで登る、というスタイルで、作業労力が大きい上に、感電・転落などの危険性が伴い、しかも工事に時間が掛かりました。
その課題に対して、電力会社や通信会社では、絶縁素材でできたバケットを昇降することで、安全かつ迅速に作業が行なえる高所作業車の導入を進めることになります。
チェリーピッカータイプのバケット付ブーム型は、1950年代後半に中部電力(直伸式ブーム)や新明和工業(屈折式ブーム)などで開発されたものが、どうやら始祖もしくはそれに近いと考えられます。これらの外見には米国車の影響も感じられるのですが、実際のところは不明。1961年にバケット付ブーム型を製品化したカヤバ(当時は萱場工業)は、米国の特装車メーカーと提携して、その技術を導入していました。
現在のトップメーカーであるアイチコーポレーション(当時は愛知車輛)は、これらより遅れて1965年にバケット付ブーム型の高所作業車を試作、翌年に製品化しています。この当時の同社では、バケット付直伸式ブーム型および屈折式ブーム型に限らず、垂直リフト型、直進式ラダー型など様々な昇降メカニズムの高所作業車を製品化していました。
1950年代から1970年代前半あたりまで、高所作業車というのはニッチでマイナーな特装車であり、保有台数も限られていました。しかし、アイチは高所作業車に注力することで、1970年代に圧倒的な業界シェアを得ていました。また、この頃になると、用途によって使いやすい昇降メカニズムが徐々に見出されるようになり、電工系/通工系ではバケット付かつ直伸式ブームへと収斂してゆきます。
特筆すべきは、1975年に製品化したバケット揚程高13.5m級の直伸式ブーム機「スカイマスターSH135型」で、バケットの首振り機構とミニクレーン(ウインチ)装置を開発するとともに、それらを活用した新しい作業手順(工法)まで考案していました。これは、いまに続く日本の電工系高所作業車と工法のスタンダードを築くという、非常に画期的なものになったのです。
コメント
コメントの使い方