災害に強い物流とは!? スワップボディと中継輸送の可能性を探る

災害に強い物流体制に

 労働時間の問題だけではなく、災害に強い体制も今の日本の物流には必要だと考えられる。南海トラフ巨大地震や首都直下地震が発生する危険性も指摘され、台風による被害も近年激化している。

 2011年の東日本大震災では、「インフラのひとつ」であるはずのトラック輸送がほとんど機能せず、東北の太平洋側ではスーパー、コンビニは閉店、ガソリンスタンドには長蛇の列、物資不足に陥った。

インフラのひとつであるはずのトラック輸送がほとんど機能しなかった東日本大震災
インフラのひとつであるはずのトラック輸送がほとんど機能しなかった東日本大震災

 しかし、道路、鉄道、電気、電話、水道といったインフラでは、全国から同業者の応援車両が集結、直ちに復旧の作戦が練られ、夏ごろにはかなり復旧した。この差は何か?

 「トラック輸送はインフラ」と言いながらも、やはり、営利企業の集まりでしかなかった。他のインフラと違って、荷主の発注が無ければ、自律的にはモノを運ぶことができない。当時、インターネットはあったが、現在ほどは普及しておらず、荷主企業も情報不足で、なかなか輸送の発注が出せなかった。

 また、沿岸の物流施設が津波の被害を受けて、サプライチェーンが正常化しなかったこともある。輸送の正常化のゴールは、自治体などが依頼する支援物資を輸送することではなく、正規のサプライチェーンを修復し、スーパー、コンビニに商品が並ぶところにある。

 物流企業、流通、自治体が事前に協議しておくことが重要だ。2023年は名古屋港で海上コンテナ搬出入の統一システムがランサムウェアの攻撃とみられる原因でダウンし、コンテナ輸送がストップしてしまった。

 防御対策を強化することはいうまでもないが、主要港周辺の道路渋滞や待ち時間をかんがみても、地方のコンテナ港への分散化を促進し、災害時に補完できる冗長性を確保しておくことも必要であろう。

 2023年9月には山陽道下り兵庫・岡山県境の尼子山トンネルでトラック火災があり、トンネル内部が激しく損傷、長期通行止めとなり、開通見込みは12月下旬とされる。

 並行する国道2号の交通量は倍増し渋滞が発生、中国道迂回ルートにしても1時間程の遠回りとなる。急遽交通量が増えた中国道では、パーキングエリアの駐車枠不足やガソリンスタンドの軽油販売量制限が問題化、ドライバーは苦労した。

 トンネルひとつの通行止めでこれだけ苦労するのだから、もし巨大地震が発生したら、物流の寸断や麻痺が予想される。そうした時に、「ここだけ海上でワープできれば……」という状況が発生するかも知れない。

 実際、阪神淡路大震災の発生直後には、神戸を境に東西の交通が寸断。徳島港には、一度四国に渡って西日本に行こうとするトラックが殺到し、何時間待てば乗れるのかわからない状況になった。

 今回の緊急パッケージで、国はモーダルシフトの増強で「鉄道・船舶輸送を10年で2倍にする」としているが、船社では「RORO船(乗客を乗せず、トレーラなどの輸送に特化した船)1艘建造するのに数千億円かかり、期間も要する」という。

 それならば、国有のRORO船を建造し、普段は運用を船社に委託、災害が発生した場合は、緊急輸送の新たなルートをつくるという運用にしてはどうか。「2024年問題」は、多くの人が物流に関して考える機会を与えてくれた。これを契機に、より仕事をしやすく、災害に対して強い、冗長性のある物流になればと思う。

【画像ギャラリー】中小企業ができる2024年問題の対策と、災害に備えるトラック輸送のあり方(5枚)画像ギャラリー

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