世界各国のトラックをメーカーごとに紹介する「世界のトラック」。今回はスウェーデンの「スカニア」をピックアップする。同社は日本市場に参入している欧州メーカー2社のうちの1社で、圧倒的な居住性を誇るキャブは長距離ドライバーの憧れ。重量物輸送でも高出力V8エンジン搭載車が大活躍中だ。長距離輸送から重量物輸送まで幅広く対応する同社の欧州向け最新ラインナップを多賀まりお氏が解説!!
文／多賀まりお
写真／スカニア
※2020年3月発行「フルロード」第36号より
総重量16トン以上の大型車に特化
スカニアは欧州の主要7社の中で唯一GVW16トン以上の大型車を専門とする商用車メーカー。2018年には欧州市場で16.4%のシェアを記録した中堅どころだ。
社名はスウェーデンの地方の名称に由来し、本拠はストックホルム近郊のセーデルテリエに置く。現在はMANとともにフォルクスワーゲン傘下の商用車グループ「TRATON」の一員で、AMT「オプティクルーズ」はMANの一部にも展開されている。
現在のトラックは2016年8月に発表された新世代モデルである。スカニアのキャブはモジュール設計を導入しており、フロアの高さ（センタートンネル段差の低さ）が異なるP、G、R、Sの4種類のシリーズを基本に、それぞれ複数のキャブ前後長とルーフ高のバリアントを設定する。
また、このほか主に特装系で使われるローエントリーキャブとして、Pシリーズのキャブをフロントオーバーハングの低い位置に搭載したLシリーズも存在する。
この手法はメルセデス・ベンツの大型車と同様だが、キャブ幅は2.5m（メルセデス・ベンツは2.3m幅も設定する）のみ。トンネル段差はもっとも大きいPが440mmで、Gが335mm、Rは155mmと小さく、Sは段差なしのフラットフロアとなる。
直列5/6気筒とV型8気筒を擁するエンジンもモジュール設計を導入し、ストロークは異なるがボアと燃焼室設計は共通。EGRを使わず尿素SCRと燃焼制御だけでNOx低減を図る「SCRオンリー」の展開が進んでいる。排気量16L級は各社とも直6に移行し、V8はスカニアだけ。独特な振動にはファンも多い。
●Sシリーズ
2016年のフルモデルチェンジを機に新設定された最上級モデル。従来のフラッグシップモデルであるRシリーズよりも約150mmキャブの搭載位置を上げてフルフラットフロアを実現。Rシリーズと基本骨格を共有するキャブはスリーパーキャブのみで、室内高1850mmの標準ルーフと2070mmのハイルーフを設定する。エンジンは12.7LのDC13型直6と16.4LのDC16型V8が用意され、前者の420〜560PSに対してV8は520〜770PSを発揮する。
●Rシリーズ
長距離輸送用の標準モデルで、Sシリーズに対して155mmのフロアトンネルが存在する。といってもフルサイズベッドを備えるスリーパーキャブの場合、違いはそれだけ。標準/ハイルーフとも左右座席部の室内高は変わらず、パワートレーンも同じものが選べる。ただし守備範囲の広いRにはデイキャブや室内高1500mmのローキャブも用意される。
●Gシリーズ
中・長距離輸送〜特装系で幅広く使われる汎用モデル。キャブフロアには段差335mmのフロアトンネルがあり、スリーパーキャブ、簡易ベッドの装着が可能なデイキャブとともに、ベッドレスのショートキャブも用意される。エンジンの設定は9.3L直5のDC9型と12.7L直6のDC13型。最高出力280〜360PSのDC9型はDC13型の5気筒版だ。
●Pシリーズ
近距離の集配輸送や特装系で使われるPシリーズ。440mmのフロアトンネル高は日本の大型車にほど近い。キャブ展開、室内高はGシリーズと同様。エンジンはDC9型、DC13型のほか220〜280PSを発揮する6.7LのDC07型もある。
●Lシリーズ
2017年に登場したローエントリーキャブは主にGVW26t級の塵芥車などで使われる。キャブを前方に低く搭載して乗降性を高めたのが特徴。フロア高は約800mmである。キャブはロー/標準/ハイルーフが用意され、DC9型エンジンを搭載する。
コメント
コメントの使い方