大排気量自然吸気エンジンはナゼ消えた? 小排気量ターボが主流となったトラック用ディーゼルエンジンの進化の歴史を紐解く!!

ターボが必須になったワケ

 PMを減らすためには、燃料噴射系の改良(噴射圧の高圧化や多段噴射制御)による燃焼制御で、燃料の濃すぎる(酸素が不足する)部分をなくすことが高い効果を持つが、基本はなるべく多くの酸素を燃焼室内に取り入れることだ。

 このため、ピストンの下降による負圧だけでシリンダー内に空気を吸入する自然吸気エンジンは、ディーゼル排ガス規制の厳格化が進むと対応が難しくなり、2005年施行の平成17年「新長期」排ガス規制までに消滅。

 国内のトラック/バス用ディーゼルエンジンは、すべてターボチャージャー付きに置き換えられた。

 過給器の一種であるターボは、排気ガスの圧力でタービンを回し、その回転力でコンプレッサを駆動して吸入空気を圧縮。自然吸気よりも多くの空気をシリンダーに送り込み、増えた酸素量に見合った燃料噴射によって高い出力を発揮する。

 最新の排ガス規制対応では、EGRにより広範な運転領域で酸素密度の低い再循環ガスを導入しており、ターボ(過給)によって新気も積極的に取り入れないと充分な出力が得られない。規制適合と出力/燃費性能の両立を求められる最新のディーゼルに、過給は不可欠な存在なのだ。

高過給が実現したエンジンのダウンサイジング

 現在、トラックの各クラスで進んでいるエンジンのダウンサイジングとは、小型軽量ながら元のエンジンと同等の性能を持つ小排気量ユニットに置き換えることを指す。架装/積載上のメリット(大型車の場合、積載量を増やせるほか、エンジン全長の短縮でショートキャブが成立したりする)のほか、省燃費効果が期待できる。

 効果的な高過給システムや、最新の噴射系、高い圧力と熱負荷に耐える躯体などによって元のエンジンよりも高い「平均有効圧力(燃焼時にピストンに掛かる燃焼の強さの尺度)」を持つダウンサイジング用エンジンは、排気量が小さくても元のエンジンに遜色ない出力性能を発揮し得る。

 排気量が小さい分、エンジン内部の摩擦損失が小さくなり、燃費にも有利だ。

 ただし、同じ小排気量化でも、平均有効圧力が元のエンジンと変わらない小排気量エンジンでは、同じ走り方をしても元のエンジンより燃料消費量が多い高負荷域で運転されることが増え、結果的に燃費が良くならない場合もある。小排気量化が必ず省燃費効果をもたらすとは限らないのだ。

 かつて20L級の自然吸気エンジンが当たり前だった大型トラックのエンジン排気量(最大はいすゞ10TD1型の30390ccV10)は、過給化によって13Lが主流となり、ここにきて8.8〜10.8L級にダウンサイズされた。

 排ガス規制は一段落した格好だが、これからはより一層燃費性能がクローズアップされ、燃費基準への対応などをきっかけとして、現在は軽負荷用途を中心とする7.7L級小排気量エンジンの守備範囲が、負荷の高い用途にも広がるのは確実だろう。

 海外ではディーゼル車を締め出す地域規制がすでに始まっているが、バッテリーの容積/重量に対するエネルギー密度及びコストが画期的に向上(低廉化)しない限り大型車、とりわけ長距離輸送用セミトラクタのフル電動化は容易ではない。

 待ったなしの課題であるCO2削減には、できることからやるしかない。可能な限りディーゼルを延命させる、これからの技術革新に期待したい。

【画像ギャラリー】小排気量でも力持ち!! ダウンサイジングを進めるいすゞの大型トラック用ディーゼルエンジンのバリエーションをチェック!!(6枚)画像ギャラリー

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