もう10年以上前になるが、IAA国際商用車ショーの取材の途中、ドイツのカールスルーエという街に行ったときのこと。泊まったホテルの隣に大きな広場があり、そこに奇妙奇天烈なトラックが停まっているのが見えた。
「なんだろう、あのトラック?」。そこから嬉しくも楽しい偶然の出会いが始まった。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
泊まったホテルの隣に奇妙奇天烈なトラックが……
好奇心にかられて早速近くまで行ってみると、確かに奇妙奇天烈ではあるが、以前写真で見たことのあるトラックだった。
それは、銀色のトラックがメルセデス・ベンツベースのバルクタンカートラック、白色のトラックがDAF3000エアロだと思うが、共に2000年に発表されたコンセプトトラックだった。
造ったのはルイジ・コラーニ。ドイツ・ベルリン出身の工業デザイナーで、いわゆる「バイオデザイン」と称される、生き物の持つ曲線をモチーフにしたデザインが彼の真骨頂。
一世を風靡したコラーニデザイン
日用品から都市に至るまでデザインの守備範囲は幅広いが、やはり最も多く手掛けているのが自動車や飛行機、船舶などの乗り物のデザインである。
中でも一連の流線型のコンセプトトラックは、ルイジ・コラーニのデザインが凝縮した彼の代表作といえるものだ。
日本でルイジ・コラーニのブームが巻き起こったのは1980年から1990年代の前半だったと記憶しているが、確かに現代のデザイントレンドからは「時代遅れ」であることは否めないものの、やはり、かつてのワクワクドキドキがよみがえる大好きなコンセプトトラックであることに違いはない。
そんなトラックがなぜこんなところに……? トラックを見てまわり、さらに広場の奥に行くと、そこには展示場のような建物があり、何と「ルイジ・コラーニ展」を開催中だった。
これは是非見なければならないと、チケットを買おうと思うのだが、誰もいない。「もしも~し、誰かいませんか?」と言うと、奥から白いタートルネックのセーターを着たオジさんが「ハイよ、待っててくれよ、いまモギリのオバさんがいないんでよ」と言いつつ、チケットを売ってくれた。
ん? どこかでみたような人だな。ん? んん? まさかまさか!?