初秋のドイツ トラック紀行ふたたび その5

初秋のドイツ トラック紀行ふたたび その5
トラックの生産ラインは、異なる車型が1つのラインで製造される、いわゆる混流生産です。これは日本のメーカーでも採用していますが、メルセデスのトラックのラインナップは5車型もあるので、キャブだけでも550も異なるバリエーションがあり、当然ながらシャシーも千差万別で、燃料タンクだけでも200種類あると聞くと、素人考えでは「組み付けを間違えちゃったりしないの?」と真っ先に思っちゃいますよね。でも、シャシーもキャブも完璧にプログラミングされてラインを流れているので、「これアクトロスのとちゃうやん。アントスのフロントバネルやん! もう、はよ取っ替えてきいや」なんてことは絶対にないそうです。ちなみに仕様の違いを全部掛け合わせると、バリエーションは何と150万種類! ため息が出ちゃいますね、ハァ~。
シャシーは、アクスルなどの下回りが組み付けやすいよう最初は仰向け(?)でラインを流れていますが、途中でひっくり返されてエンジンやトランスミッションを搭載。いっぽうプリアッセンブリされたキャブは、ペイントショップに入り塗色されるわけですが、色数は470色も用意されているそうです。ベンツSクラスだって12色ですから、トラックのボディカラーはべらぼうに多いんですが、これは、コカ・コーラの車両なら「コカ・コーラレッド」といったようにコーポレートカラーが決められているため。ちなみにシャシーも120色の塗色が用意されているそうで、これもコカ・コーラを引き合いに出すと、キャブに合わせてシャシーもコカ・コーラレッドで決めたい! というユーザーの要望に応えるためだそうです。
ペイントシステムの基本的な考え方は、乗用車と同じ品質レベルを保つということで、防錆処理や表面処理、プライマーを念入りに行ない、さらにメタリックの塗装にはクリアコートをかけています。トラックだからといって乗用車より品質が劣ってもいいなんて考えはないんですね。キャブはその後トリムラインに入り、さまざまなマテリアルや装備を艤装します。
いっぽうシャシーは、アクスルなどの下回りが組み付けやすいよう最初は仰向け(?)でラインを流れていますが、途中でひっくり返されてエンジンやトランスミッションを搭載。そこへ別ラインで流れて準備していた先ほどのキャブが2階から下りてきて、晴れてシャシーと合体。流行りの言葉でいえばシャシーとキャブのマリアージュって奴ですな。でも、これで「めでたしめでたし」かというと、この後はさらに厳しい品質検査が待っています。
ということで、ヴェルト工場の特徴は3つ。まず1番目は1日400台を生産する量産性ということ。ちなみにドイツで登録されるトラックの半数は、ここヴェルト工場で製造された車両なんだそうです。2番目は150万通りの複雑な仕様にも対応する柔軟性ということ。先ほど言い忘れましたが、ラインを流れるトラックは、仕向け地によって旧型も混流されているそうで、スゴいとしか言いようがありません。最後の3番目は品質の高さで、高級乗用車の代名詞であるメルセデス・ベンツというブランドは、トラックでも有効ということなんですね。
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