物流DX化を支援している株式会社Azoopは、「2025年物流業界10大ニュース」を選定し、2025年11月13日に発表した。
運送業界は、ドライバー不足に加えて働き方改革への対応、燃料費の高騰、環境規制の強化など、かつてないほどの変革期を迎えている。Azoopは物流業界の経営・業務の変革を支援してきた経験を踏まえて、社会課題として注視すべき重要テーマを「10大ニュース」として発表すると共に、朴 貴頌(ぱく きそん)代表取締役社長CEOが各トピックを総括している。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
図/株式会社Azoop
2025年の物流業界10大ニュース 1位は「改正物流2法」
物流業界の労働環境の改善と取引の透明化を図るため、政府は「流通業務総合効率化法」と「貨物自動車運送事業法」を改正した。これらは物流の効率化と適正化を目的とした基幹法であり、2025年4月1日から段階的に施行されている。
これまで物流業界では、不透明な取引慣行や多重下請け構造により、実運送事業者の経営が圧迫されてきた。本改正により、こうした長年の課題を是正し、物流全体の適正化と業界の持続可能な発展が期待される。
【Azoopの朴 貴頌CEOによる総括】
運送の現場では、「運賃」は運搬作業のみに支払われるいっぽうで、荷役などの付帯作業を契約に明記せず、無償で対応してしまうケースが多く見られました。
例えば、タクシーの業務に、目的地に着いた後に荷物の運搬を依頼することが通常ないように、本来こうした作業は別契約で対価が発生すべきものです。
改正法では、このような付帯作業を運送契約に明記し、対価を支払うことを義務付けています。さらに、実運送体制管理簿の提出義務化により、多重下請け構造の是正が進み、サプライチェーン全体の最適化に向けて、物流統括管理者(CLO)の設置も新たに導入されました。
2025年は、こうした制度改革が本格的に始動する象徴的な年となりました。業界としても改善への期待が高まるいっぽう、現場レベルでの実効性については、まだ充分に浸透していないのが現状です。今後の運用と定着を通じて、真に持続可能な物流環境の実現が期待されます。
2位は「トラック事業適正化関連法」
今年6月に成立したトラック事業適正化関連法は、段階的に施行が開始される予定だ。物流業界の多重下請け構造や不透明な取引を是正するため、運送事業者と荷主双方に対する新しい規制が導入される。
内容としては、運送事業者の5年ごとの許可更新制や、国土交通省が定める「適正原価」を継続的に下回らないことの確保、さらに、委託次数(下請けへの再委託の回数)を2回以内に制限すること、違法な白トラック利用を行なう荷主の取り締まり強化といった、全日本トラック協会が強く求めていたものが含まれている。
【朴CEOによる総括】
これまで国としても、複雑な取引慣行や多重下請け構造に一定の“黙認”があったといえます。しかし、近年の社会的潮流を踏まえ、もはや従来の在り方を放置できないとの認識のもと、国が本格的に物流業界の再編に乗り出したといえるでしょう。
なかでも「委託次数の制限」は、最も実務的な課題となると考えています。多重下請け構造の是正は業界全体の課題ですが、どのように荷主や元請けが委託の階層を把握・管理していくのかが実効性の鍵となります。
この法律は2026年以降にかけて段階的に施行・運用が進む見通しであり、現場ではいまだにグレーな取引も見受けられることから、今後の制度運用の具体化と実効性確保に向けて、引き続き注視していく必要があります。


コメント
コメントの使い方