スウェーデンのボルボ・トラックスは、かねてより予告していた長距離輸送用のBEV大型トラックを公開した。2026年に正式に発売する。780kWh容量のバッテリーを搭載し航続距離は600kmに達したほか、大型BEVのために開発が進められている「MCS」による超高速充電に対応し、この大容量バッテリーをわずか40分で充電可能だという。
さらに、ディーゼル車に近い積載量を確保したとしており、ボルボのフラッグシップBEVトラックが長距離輸送に革命を起こすかもしれない。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/AB Volvo
ボルボが長距離輸送用の新型BEVトラックを公開
ボルボ・トラックスは2025年5月20日、長距離輸送用の新型バッテリーEV(BEV)トラックを公開した。大容量バッテリーを搭載し航続距離は最大600kmに達するいっぽう、充電は40分で可能だという。
ボルボのフラッグシップBEV大型トラックは、長距離輸送に革命を起こす可能性を秘めている。
新型のBEV大型トラックとなる「ボルボ・FHエアロ・エレクトリック」は電動アクスルを採用し、2026年第2四半期に受注を開始する。画像とスペックの一部が公開されており、(欧州の)顧客は既に注文意向書に署名することも可能だという。
新型FHエアロ・エレクトリックは長距離輸送向けに設計された。長距離輸送用の大型トラックというセグメントは、大型商用車で最大のボリュームゾーンであり、最も多くCO2を排出している分野でもあるが、電動化が困難な領域とされてきた。
新型トラックは急速充電機能と600kmの航続距離を備え、BEVトラックによる長距離輸送を可能にするという。
ボルボ・トラックス社長のロジャー・アルム氏は次のようにコメントしている。
「ゼロ排出輸送にとって、これは真のブレークスルーです。運送会社は生産性を犠牲にすることなく、電動のトラックで長距離輸送を行なうことができるようになります。超高速充電と高積載を両立した新型トラックは、非常に競争力のあるソリューションです。
走行距離の長い長距離トラックは1台当たりのCO2排出量が多く、その運行をBEVトラックで行なえるようになれば、業界からのCO2排出量は大きく削減できます。これは運送会社と私たちの社会にとって素晴らしいニュースです」。
大容量バッテリーと高積載を両立
長い航続距離を実現するには大容量のバッテリーが必要になるが、大容量のバッテリーを充電するには長い時間がかかる。
新型FHエアロ・エレクトリックは、新たに「MCS(メガワット・チャージング・システム)」規格に対応した。メガワット(MW)級の大電力で充電を行なうMCSによりバッテリーパックの充電(20~80%充電)に掛かる時間は40分だ。
「40分」はEU域内でトラックドライバーに義務付けられている法定休憩(4.5時間の運転につき45分の休憩)を考慮したもので、休憩時間だけで充電が終われば充電のためにトラックを動かせない時間が減り、生産性の向上が期待できる。
もちろん、MCS規格の充電網と大型車を駐車できるトラックドライバー向けの休憩施設を併せて整備していく必要があるなどインフラ面での課題はあるが、実現すれば本格的な長距離輸送も電気だけで可能になる。
いっぽう、新型トラックの総重量は48トンとなり(欧州のゼロ排出車への重量規制の緩和措置を含むものと思われる)従来のディーゼル車に近い積載量を確保した。
これは補助軸を追加した6×2アクスル構成によって実現したそうで、公開されている画像からタグアクスル(トラクタ最後軸)に外径の小さいタイヤを履いていることが確認できる。これには重量がかさむバッテリーの重量配分を最適化するという意味もあり、重いトレーラと組み合わせた場合にメリットがあるという。
新型ドライブラインも効率化に寄与している。ボルボは従来、ディーゼル車と共通のコンポーネントを利用できるセントラルドライブ方式(中央に配置したモーターがシャフトを介して駆動軸と接続する方式)を採用することが多かったが、新型車ではeアクスル方式(駆動軸にモーターやトランスミッションを組み込んだ方式)を採用した。
eアクスルにより搭載可能なバッテリーが増え、バッテリーパック8個で780kWhという大容量を実現している。
ボルボの電動化関連サービスは、もちろん新型トラックでも利用可能で、標準キャブも用意される。こうしたサービスには、例えば電動化に適したルートの評価、経路やホームでの効率的な充電計画、BEVトラックのパフォーマンスに関する詳細なフォローアップなどが含まれている。
「私たちは業界で最も包括的なBEVトラックのラインナップを提供しています。最初に電気駆動のトラックをラインナップに追加してから5年以上が経ち、大規模な運送会社から小規模な事業者まで、数千のお客様の電動化を支援してきました。脱炭素の取り組みを始めたい運送会社は、まずはボルボ・トラックスを頼ってください」。(ロジャー・アルム社長)
ボルボは中型~大型のBEVトラックを8モデルラインナップしており、この分野では世界的なリーダーだ。地場輸送や中距離輸送、建設業界向け、廃棄物運搬などに加えて今や長距離輸送の電動化も可能になった。ボルボがBEVトラックの量産化を開始したのは2019年で、これまでに世界で5000台以上を納入しているという。
ただ、ボルボの脱炭素の取り組みは電動化だけではなく、3つの技術を追求する3パス戦略で2040年までの「ネットゼロ」達成を目指している。3つの技術とはバッテリーEV(BEV)、燃料電池EV(FCEV)、再生可能燃料による内燃機関(グリーン水素、バイオガス、バイオディーゼル、HVOなどを燃料とする内燃エンジン車)だ。
【画像ギャラリー】ボルボの長距離輸送用BEV大型トラック(3枚)画像ギャラリー
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