ボルボグループはDHLサプライチェーンと提携して自動運転トラックによる貨物の自律運行を米国で開始した。大規模商用化に向けた全体的な検証を行なうもので、既に量産化の準備は整っているという。
テキサス州の2路線で既存の物流ネットワークに自動運転トラックをシームレスに統合できるか確認する。安全性を重視するボルボは自動運転システムにも冗長性を備え、検証では安全のために人間のドライバーも搭乗する。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/AB Volvo
ボルボ、DHLサプライチェーンでの「自律運行」を開始
2024年12月11日、ボルボは米国テキサス州で自動運転トラックによる自律貨物輸送を開始したと発表した。
ボルボグループで自動運転技術を担うボルボ・オートノマス・ソリューションズ(以下、VAS)と、世界的なロジスティクスプロバイダー・DHLの産業サプライチェーン部門であるDHLサプライチェーンは、共同で自動運転トラックによる貨物輸送を開始し、業界の変革に向けて大きな一歩を踏み出した。
これはボルボと提携するオーロラ社(米国)の自動運転システム「オーロラ・ドライバー」を搭載する「ボルボVNLオートノマス」(VNLは北米ボルボの長距離輸送用大型ボンネットトラック)によって実現したもので、既に量産に向けた準備も整っているという。
運行開始は、自動運転による輸送を大規模に展開するため全体的なエコシステムを検証するという、商用化に向けた最終段階に入ったことを意味しており、この段階では安全のために人間のドライバーが搭乗している。
運転操作はシステムが行ない、ドライバーはそのパフォーマンスを監視するとともに既存の物流ネットワークに自動運転トラックがシームレスに統合できるか確認する。
運行路線はテキサス州の「ダラス-ヒューストン間」と「フォートワース-エルパソ間」の2路線だ。
安全性へのコミットメントは変わらず 革新のために戦略提携
プレスリリースにおいて、VASのオンロードソリューション責任者、サスコ・チュクレフ氏は次のようにコメントしている。
「貨物輸送における自動運転技術の導入と受け入れを加速するため、『アーリー・アダプター』の存在が極めて重要です。彼らがいなければ、私たちはその安全性と運行パフォーマンスを検証することができません。
DHLサプライチェーンとの提携は、輸送可能な貨物のキャパシティを増やしサプライチェーンの効率化を進めている運送業界の努力を、自動運転という手段によって補うことができることを示す好例です」。
いっぽう、DHLサプライチェーンの北米輸送事業担当社長のジム・モンクメイヤー氏は次のように付け加えた。
「長距離輸送の輸送力を確実に向上し、ロジスティクスのデジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進する上で、『自動化』は重要な要素になっています。弊社の貨物は24時間休みなく動き続けており、その運用ニーズに合わせる上でボルボとの長年にわたるパートナーシップが重要な役割を果たしました。
安全性を重視しながら絶えず革新を追求するボルボは、トラック輸送の効率を向上し顧客により大きな価値を提供することを目指している弊社にとって、理想的なパートナーです」。
ボルボの安全性へのコミットメントは自動運転トラックにも受け継がれており、VNLオートノマスは当初からシステムの重要部分に冗長性を組み込んだ設計となっている。
現在一般的な自動運転システムは、プライマリシステムに何らかの不具合が発生した場合、人間がバックアップに入る(そのためにセーフティ・ドライバーが必要)。冗長性を備えた自動運転ではセカンダリシステムに制御が移り、1系統に不具合が発生しても安全な運行が保証される。
こうした安全性に対する取り組みは、オーロラとの緊密な連携によってさらに強化されている。オーロラ・ドライバーには高解像度カメラ、イメージングレーダー、独自のロングレンジLiDARなど、高速道路の巡航スピードで安全な自動運転を実現する強力なセンサーが搭載され、ボルボVNLオートノマスはこれを通じて周囲の環境を認識している。
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