トラックの室内は運転だけでなく休憩や待機、事務処理や食事など、ドライバーが1日の大半を過ごす場所。仕事によっては数日から1週間以上家に帰れないことも普通にあるだけに、室内の居住性や快適性は安全な運行を担保する上でも重要だ。
アメリカでは、橋梁を過大な負荷から守るための法律である連邦ブリッジ・フォーミュラによってトラクタのホイールベースにも一定の長さが求められるいっぽう、一般的な形態のセミトレーラは連結全長を規制されないことから、キャブ前後長を短くしてもメリットが少ないためボンネット型キャブが主流。
そんなアメリカのボンネット型キャブにも、色々なトレンドがあるようだ。ここではアメリカントラッカーの人気を二分する「最新スタイル」と「クラシックスタイル」を紹介しよう。
文/多賀まりお
*2021年3月13日発売「フルロード」第40号より
■エアロパーツと高効率AMTを組み合わせ
優れた燃費性能を誇る「最新スタイル」
アメリカのロングホール(長距離輸送)セグメントで活躍するトラックはボンネット型キャブが主流。そのなかでも近年人気を集めているのが新世代モデルに代表される「最新スタイル」だ。
最大の特徴は、車体各所に取り付けられたエアロパーツの数々で、高効率のAMT(Automated manual transmission)と組み合わせることで燃費性能を向上。優れた経済性・環境性とともに居住性や安全性にも優れており、近年増加傾向にある。
その代表格がフレイトライナーのフラッグシップモデル「カスケディア」。メルセデス・ベンツ「アクトロス」や三菱ふそう「スーパーグレート」と同じくダイムラーの最新技術を詰め込んだ新世代モデルだ。
カスケディアのキャブはスリーパーとの一体構造により広大な室内空間を確保。一番人気の前後長72インチ(約1.82m)の「レイズドルーフスリーパー」には、2段ベッドのほか潤沢な収納や冷蔵庫、電子レンジなど生活必需品が揃う。内装も後述のケンワースW900より今風だ。
メーター周りやスイッチ付きステアリング、コラム右側のAMT操作レバーなどをダイムラー共用パーツ。20年モデルには北米大型車初のレベル2高度運転支援機能など先進安全装備を設定される。
■カスタマイズを尊ぶ保守的な市場の象徴
フルオーダーメイドの「クラシックスタイル」
すでに大勢は先述の最新スタイルに移っているものの、カスタマイズを尊ぶ保守的な市場ゆえか、いまなお根強い人気を誇っているのが、ケンワース「W900」に代表される「クラシックスタイル」だ。
ケンワースの現在の主力はエアロキャブだが、かつてのフラッグシップである「W900」も生産を続けている。カスケディアと違い、キャブとスリーパーは別体構造となっており、運転席の居住性はすべてデイキャブと同等。
フロントウインドウは上下方向の視界が狭く、キャブ部分の幅は約2.1mしかない。インパネはお約束というべきクロームリング付きのアナログメーターで、ギアボックスはAMTも選べるが、マニュアル信奉者も多く、ノンシンクロの18段ギアボックスも標準的な仕様だ。
スリーパーは前後長38インチのフラットトップから、クラス最大級の前後長86インチ「エアロダインスタジオスリーパー」まで幅広く設定。2段ベッドや収納、テレビ、冷蔵庫など最新スタイルに引けをとらない装備をゴージャスなデザインでまとめている。
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