「市村産業賞」貢献賞を受賞!! いすゞが新開発したエルフのデュアルクラッチ式9段トランスミッションは何がすごいのか?

「市村産業賞」貢献賞を受賞!! いすゞが新開発したエルフのデュアルクラッチ式9段トランスミッションは何がすごいのか?

 いすゞ自動車の小型トラック向けデュアルクラッチ式9段トランスミッション「ISIM(アイシム)」が、公益財団法人市村清新技術財団が主催する「第57回 市村産業賞」において「貢献賞」を受賞した。

 2023年3月にフルモデルチェンジした新型エルフに設定された「ISIM」。あたらめてどんなトランスミッションなのか?

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/いすゞ自動車、フルロード編集部

「ISIM」を搭載した新型エルフ

標準キャブの新型エルフとエルフEV。標準キャブでは30年ぶりにキャブ骨格の一新も行なわれた
標準キャブの新型エルフとエルフEV。標準キャブでは30年ぶりにキャブ骨格の一新も行なわれた

 空力性能を追求したニューデザインを採用した新型エルフは、ADAS(先進運転支援システム)の拡充に加え、モジュラー化を目指した新しいプラットフォーム「I‐MACS(アイマックス)」を採用することで、さまざまなコンポーネントに対応。

 ディーゼルシャシーと大部分を共有化したEVトラック(エルフEV)も、いすゞの量産車として初めて展開した。

ISIMのシフトレバー。パターンはスムーサーExと共通で右側ゲートにはマニュアルモードが備わる
ISIMのシフトレバー。パターンはスムーサーExと共通で右側ゲートにはマニュアルモードが備わる

 そしてディーゼル車においては、従来の6段AMT「スムーサーEx」に代えて、新開発のデュアルクラッチ式9段トランシミッション(DCT)の「ISIM(いすゞ・スムーズ・インテリジェント・トランスミッション)」を設定。

 エンジンは3.0リッターの「4JZ1」型(150PS/175PSの2種)を継続搭載となるが、空力性能の向上とDCTなどによる燃費性能の向上で、新型エルフは多くの車型で新しい2025年度重量車燃費基準「JH25モード燃費」の超過達成を果たした。

 なお「ISIM」搭載の積載量2トンクラス・2WD・150PS・アイドリングストップ&スタート付き車型においては、JH25の+15%超過達成となり、クラストップレベルの燃費性能を実現した。

「市村産業賞」貢献賞を受賞した「ISIM」の特徴

 市村産業賞は、優れた国産技術を開発することで、産業分野の発展に貢献・功績のあった技術開発者に対して贈呈される権威ある技術賞のひとつ。

 いすゞの受賞は今回が初めてとなるが、幅広いドライバーが燃費性能や運転性能を発揮できるコンポーネントとして評価されたのがその受賞理由だ。

 新開発DCT「ISIM」の特徴としては、従来の「スムーサーEx」の6段に対して9段へ多段化し、オーバードライブは8速と9速の2段に増段。オーバーオールレシオは1.4倍へワイドレンジ化し、段間比を1.3前後とするクロスレシオ化を図った。

 さらに、奇数段(1、3、5、7、9速)と偶数段(2、4、6、8速)の2つの入力軸をもつデュアルクラッチ構造を採用したことで、従来では変速時にギアを切り替える間(トルク抜け)があったが、準備していた次のギアに瞬時に切り替えることができ間断なく行なえるようになった。

 これらにより「ISIM」は、エンジン回転数を全体的に低く抑え、幅広い速度領域や積載量の変化に対してもスムーズな加速を可能とし、イージードライブ性能と燃費性能の向上に大きく貢献している。

ISIMはスムーサーExと同じくステーター付きのフルードカップリングが備わる。また、入力軸は二重構造となっており、入力軸からカウンターシャフトへ伝達するプライマリーギアは3つ(通常のMTでは1つ)。プライマリーミドルギアは偶数段用、プライマリーハイギアは5、9速用、プライマリーローギアは1、3速用だ
ISIMはスムーサーExと同じくステーター付きのフルードカップリングが備わる。また、入力軸は二重構造となっており、入力軸からカウンターシャフトへ伝達するプライマリーギアは3つ(通常のMTでは1つ)。プライマリーミドルギアは偶数段用、プライマリーハイギアは5、9速用、プライマリーローギアは1、3速用だ
各段の伝達経路のイメージ。デュアルクラッチ式のISIMでは、走行中は空いているほうのカウンターシャフトと出力軸に次に使うギア段を噛みあわせておき、変速時はクラッチの繋ぎ替えだけで瞬時に完結する
各段の伝達経路のイメージ。デュアルクラッチ式のISIMでは、走行中は空いているほうのカウンターシャフトと出力軸に次に使うギア段を噛みあわせておき、変速時はクラッチの繋ぎ替えだけで瞬時に完結する

 また、構造的に重量が嵩み大型化してしまうのがDCTのデメリットであるが、「ISIM」では「スムーサーEx」比で全長を17mm短縮し、8kgの軽量化も達成した。

 これは発進デバイスに、「スムーサーEx」と同じく流体継手のフルードカップリングを採用し、デュアルクラッチを変速機能に特化させることでコンパクト化(かつ発進時の信頼性も確保)を実現。

 また軽量化においては、油圧で直接駆動させるギアシフトユニットをトランスミッションに内蔵する方式を新たに採用したことが寄与している。

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