アリソンATのラインナップ
米・アリソンは、中型・大型商用車用フルオートマチックトランスミッションの分野で世界シェアトップメーカー。日本向けのATラインナップとしてトルク容量別に中型車向けの1000、2000シリーズと大型車向けの3000、4000シリーズなどを展開している。
このうち日野自動車は中型・日野レンジャーのFCダンプ、GKミキサ等にアリソンATを設定。さらに今年から大型・日野プロフィアFS(6×4)ベースの除雪車シャシーに標準搭載となった。
またUDトラックスは大型・クオンの総輪駆動除雪車(4×4のCF、6×6のCZ)に、いすゞ自動車は自衛隊向けの総輪駆動車(6×6)のSKWなどにATを設定。
このほか三菱ふそうの大型路線バス・エアロスター、ジェイバスが製造を担ういすゞおよび日野の各社中・大型路線バス、日野の消防車両、加藤製作所のオールテレーンクレーンなどにもアリソンATが採用されている。
なお、現在一般トラック向けには日野レンジャーのみだが、1974年に国内で最初に同社ATを採用したのはいすゞの中型・フォワードSBR。以後、1998年にいすゞの大型・ギガ(タンクローリ)、2000年にUDの中型・コンドル、2002年に三菱ふそうの中型・ファイター等にも採用されてきた。
アリソンATの現在のランナップは下図を参照してほしい。

試乗で確かめたアリソンAT搭載日野レンジャーの実力
では、ATの実力はどうだろうか? 採石場で、アリソンATを搭載する日野レンジャーFCダンプを試すことができた。
採石場の試乗コースは、最大傾斜角度が約24%ある砂利の急坂だ。早速、採石場コースの一番急な坂で停車させ坂道発進を試みると、ブレーキからアクセルの踏み替えのぶん車体はずり下がるが、アクセルを踏み込めば、すぐさまトラクションがかかり登り始める。AMTではなかなかこうしたリニアな反応は難しい。
またATはゼロ発進は必ず1速からスタートするため、通常2速発進のAMTより力強い走りが実現できるのも特徴だ。
さらにアクセルを踏み込むと、ロックアップクラッチが作動しトルコンを介さず2速、3速と変速。変速時のトルク抜け感はなく、急勾配をグングンと登っていく。
次に下り坂でエンジンブレーキを試したが、こちらも積極的なロックアップ制御で、トルコンの弱点であるスリップロスを無くしてダイレクトな制動トルクを再現。オートシフトダウンとともにMTと比較しても遜色ない減速が実現されていた。
続いては、富士スピードウェイのアップダウンの多い外周路で、アリソン3500を搭載する車両総重量20トンの日野レンジャーGKミキサを試した。
アリソン3500にはバンプ式と呼ばれるセレクターが採用されていて、上から「R・N・D・L」、Dレンジから左セレクトで手動変速モードが備わる。アリソン1000/2000シリーズのIパターンのセレクターと少々異なる仕様だ。
GKは中型用の小排気量エンジン(5リッターエンジン)を搭載するため、発進を試みるとエンジン音は唸りを上げ軽快な走り出しとはいかないが、発進性能に不足は感じない。
このあたりは、発進時のエンジントルクを2.35倍に増幅するトルクコンバーターが、不足している低速トルクを補っていることが寄与していると思われる。
次に下り坂の途中で停車し、微速後退を試した。下り坂でRレンジに入れると、クリープトルクによってブレーキから足を離しても停止をキープ。
さらに緩急をつけてアクセル操作を行なうと、車体がダイレクトに反応してくれ、アクセルだけで意のまま挙動をコントロールできる。ここまでリニアに反応できるのはアリソンATならではといえるだろう。
こうした傾斜がある場所で速度調整しながらの後退は、ミキサの荷降ろし現場でも実際に行なわれる動作で、もちろん熟練ドライバーであればMTでも行なえる動作だが、ATであれば微妙なクラッチワークが不要で、細かな速度調整が簡単に実現できるのである。
トラックにAT限定免許の導入が決まり、今後トラック業界でもMTの運転を知らないドライバーが増えていくことだろう。そうした中で誰でも高いドライバビリティを実現できるアリソンAT車は、今一度注目されるべきではないだろうか。
【画像ギャラリー】さまざまな用途で活躍するアリソンAT(15枚)画像ギャラリー
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