商用車向けオートマチックトランスミッションメーカーの米・アリソンは、オーストラリアの中・大型トラックで同社のトルクコンバータ式ATの導入が進んでいることを発表した。
この背景には、アリソンが指摘するオーストラリアにおける深刻なトラックドライバー不足があるという。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/アリソンジャパン
豪州の物流事情と高いドライバビリティを実現するアリソンAT
日本や欧州、米国をはじめ世界共通の課題となっているトラックドライバー不足。オーストラリアでもこの問題が顕著化しており、輸送力不足の影響は貨物輸送や建設業界などの重要な産業に広がっている。
その背景には、労働力の高齢化、新規参入者の不足、EC取引の需要増加、厳しい労働環境などがあり、これは日本のドライバー不足と同様の要因だ。
こうした状況の中、オーストラリアの中・大型トラックで、アリソン製トルクコンバータ式ATの導入が進んでいる。
アリソンのATは、従来のマニュアルトランスミッションや、変速を自動化したオートメイテッドマニュアルトランスミッション(AMT)に比べ、トルクコンバータと遊星歯車機構によって、トルク抜けのないスムーズな変速を実現し、操作性や動力伝達の安定性も高い。
特に、ダンプ・ミキサなど専門的な運転スキルが必要な特装トラックにおいて、そのドライバビリティの高さが評価され、オーストラリアで着実に売上げを伸ばしている要因になっている。
実際に、多くの保有車両をアリソンAT搭載車に移行しているホルシム・オーストラリア社では、ミキサ車における効果を実感している。
同社クイーンズランド地域ロジスティクスマネージャーのデイブ・キング氏は、
「大型マニュアル車を運転するための専門的なスキルは不要で、ドライバー予備軍は当社の大きな戦力となります。当社のミキサ車ドライバーは包括的なトレーニングプログラムを受講しており、その結果、心配事がひとつ減りました。重心の高いミキサ車のような車両で、クラッチ、ブレーキ、アクセルペダルのあるマニュアル車を運転する新人ドライバーにとっては、非常に挑戦的な状況かもしれません」と語る。
さらに、「私たちは非常に多くの発進、停止、アイドリングを繰り返しながら走行し、最大12度の傾斜での作業もあります。コンクリートポンプを反転する際、2台のトラックで1台のポンプに投入することもよくありますが、フルオートマチックトランスミッションのスムーズかつ素早い運転をサポートする精巧さは、排出シュートの位置決めをより正確にするのに役立っています」と、作業の効率化と安全性向上への貢献を述べている。
運転に高い技術が求められるトラックは、新規参入者にとって大きな障壁だ。「運転しやすいクルマ」は、新規参入者にとっての障壁を下げ、事業者にとっても即戦力となる人材の育成がしやすくなる。
世界中がドライバー不足という課題に直面する中、フルオートマチックトランスミッションの選択肢は、課題解決に向けた有効な手段の一つであるのかもしれない。
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