懐かしき鬼教官の指導は「オマエしばくぞ!!」 ナニワの海コンお姉さんの昔話

荷積み荷降ろしも「身体で覚えていき」

懐かしき鬼教官の指導は「オマエしばくぞ!!」 ナニワの海コンお姉さんの昔話
海コンは荷積み荷降ろしはないけれど……

 そんなこんなで1軒目の工場に到着。ここで荷降ろしするんですが、複雑なワイヤーがけに何丁ものレバーブロック、どこから手を付けていいのかわからないため、教官の動きそのものを観察。

 1回目は「そばで見といたらええ」と言ってくれたんですが……、なんせドSな教官です。きっと2回目には「やってみろ」と言うはず。なのでメモを取っていたんですね。動きながらのメモだったし、図にして描いていたのでものすごく乱雑でしたが、

 私なりの覚え書きです。もちろん見る人によっては落書きと評価され、教官には「ようわからん……」と絶句を頂戴しましたが(涙)。

 2回目以降は荷積み荷降ろしに強制参加です。「メモもええけどな身体で覚えていき」この言葉、一見優しく見守ってやる的に聞こえますが、「身体で覚えさせたら~」との含みがタップリの言葉です。なんせドSの鬼の教官なんで。

 荷扱いは天井クレーンを操る人との連携プレーです。なんと言いますか、身体で覚える隙もないって感じでして、テキパキと作業をこなす教官の横で私は放置プレーを喰らうことになります。

 何から始めていいのかわからない上に、「何ボンヤリ突っ立っとんねん」といつキックで愛情表現されるかわからない。そんな恐怖の中、私にできることと言えば教官がやっている作業の次の段階の作業をチマチマとやるくらいです。

 それでも私の動きは俊敏でしたよ。邪魔にならないように教官を避けるのに……(笑)。もしもぶつかったりしたら、首にワイヤーかけられて吊るされる可能性大ですもの。

 ま、セットが完了してから「オマエしばくぞ! いつまでもツーマンちゃうんやぞ! 覚える気あるんか~!」との言葉攻めをくらいます。

 「いえ、教官! 覚えたい気持ちは山々ですが、忍者並に動く教官のそばでは、誰も入る隙なんてありませんから」なんて言い訳をすることもできず、コンコンと説教されたのは言うまでもありません。

 鬼教官とのツーマンの期限は3航海。ようやく作業の流れをつかんだ最終日のこと。横浜から大阪へと向かう車内でおもむろにベッドに座り込む教官。「今日はここで見といたる!」ツーマン最後の運行ということもあり、教官の指導っぷりもさらに拍車がかかりました。その場所、いつでも手が届く位置ですよね。

 ということは、いつでも首を絞められる距離。最後の最後にこんな指導が待っているなんて……。「しばいたろかゴルァ!」の言葉を聞きなれた私でも、さすがに逃げ出したい心境です。

 シートの背後から「この道路は90で行け」「ここは80や!」と指令が入ります。この指令は渋滞でもなければ絶対服従のいわば命令です。例えば1km/hオーバーしてもダウンしても、教官の言葉の鉄拳が入ります。

 発進も停止も静かにスムーズでなければいけません。水の入ったコップが置いてあっても、こぼれないような運転をしなければいけない。「足首利かさんかい! しばくぞ!」ってな具合です。

 「俺の弟子やねんから、後で皆に笑われるような仕事すんなよ!」と、運転も作業もキッチリ丁寧な教官の指導も、大阪に近づくにつれて終わりを迎えようとしている頃、「1週間やったけどよう頑張ったなぁ。せめて1カ月あったらもっとキッチリ教えられたんやけどなぁ」。

 1カ月? 1カ月もこんなホラーな環境にいたら、私は間違いなくゾンビになっているでしょう。「はい。ありがとうございました。あとは一人でやって、体で覚えていくだけです。頑張ります」。

 いえ、一人で頑張らせて下さいとの懇願にも似ていたかもしれません。無事に車庫に戻ってきた時は心底ホッとしたのを覚えています。ま、無事故でホッとしたのか、教官との別れにホッとしたのかは言えませんけどね(笑)。

 なんだかんだとホラーな出来事を書きましたが、現在教官は別の会社で海上コンテナの仕事をし、私が今の会社に就職することが決まった時は居酒屋でお祝いしてくれたりして、仕事以外ではホントに優しい教官です。今でも友好関係は続いています。いえ……、師弟関係ですかね(笑)。

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