普通のOLから大転身! アメリカでトラック乗りになった「なでしこトラッカー」PUNKさんの素顔の自叙伝

なぜアメリカに渡ったのか?

 トレーラにも乗り慣れた頃、いつもの様に朝の渋滞にはまり、空を見上げていると、一機のヘリコプターが颯爽と飛んでいきました。空には渋滞なんてないんだ……。

 その自由な光景が目に焼きついて頭から離れなくなり、次第にどうすればヘリを操縦できるようになるのか調べるようになりました。すぐにわかったのは、訓練に大金が必要な事。そして、海外で免許を取得すればかなり費用を抑えられる事……。

 それからコツコツとお金を貯めてアメリカへ渡ったのが1995年の10月でした。そうです、トラックドライバーになる為にアメリカへ来た訳ではないのです。ヘリコプターパイロットになるまでのお話は端折りますが、ヘリの構造から法規の勉強、ウェザーチャートの読み方、心理学やメディカルに至るまで、操縦訓練と平行しながら徐々に知識を深めていきます。

 では、なぜアメリカでトラックドライバーになったのか、ズバリいってしまえば、生活のためです(笑)。

 プライベートパイロットライセンス(自家用操縦士)を約50時間で取得しました。コマーシャルパイロットライセンス(事業用操縦士)の試験を受ける為には最低150時間プラス計器飛行の訓練が必要です。

 ビザの関係もあって、日本とアメリカを行ったり来たり……。一番のネックは資金でした。再び日本でキャリアカーに乗り、宅配便のドライバーをやったり、タクシーの運転手もしました。

 飛行時間はなんとか100時間を越えましたが、本格的に訓練を続けるには借金するしかありません。と同時に、その頃訓練校で知り合った方と結婚を考えていた私は、将来の事を考えた末、自然と夢は遠のいていきました。

 ちなみに、そこで出会った今の主人はアメリカ人。同じ訓練校の卒業生で、インストラクターをしていました。とても優しい人で、私のことをとてもよく理解してくれますが、やはり結婚となれば、夢よりも2人の生活が大事。アメリカでトラックドライバーになることを決めたのがこの時でした。

 当時の生活は厳しく、情けない思いもしました。義理の両親宅に居候させてもらいお世話になったり、「明日食べるものはないけど、缶詰ならあるよ」なんて会話したことも……。

 でも周りの皆があたたかく見守ってくれて、本当に有難かったです。何事もそうですが、失くした時に改めて大切さ、有難さを感じます。日本を離れてわかる、日本の美しい土地、文化、食べ物、言葉、両親、友人……。これからも決して忘れられない、私の人生の財産です。

アメリカでの仕事

 アメリカで免許を取ってすぐに長距離ドライバーになる事を考えましたが、どうしても家を離れる事に抵抗があり(今もそうですが)、ローカル(地場)ドライバーとして働いています。

 日本と比べて、アメリカのトラックドライバーは、ひとことでいうならば自己責任が「重い」ということでしょうか。それは、トラックに関しても、健康管理にしても、仕事のこなし方にしても、です。

 これは一つの例ですが、アメリカではトラクタの実地試験の時、動かす前にエンジンルームを開けて、試験官にパーツの名前と何のためにあるのかをすべて説明します。トラクタに乗ってからも、ゲージの説明やブレーキの空気圧のチェックなども念入りに行ないます。

 思いもよらない故障は別として、多少の知識がないと、広いアメリカでは修理屋さんが来るまで時間がかかり、一日を棒にふることもありますから……。

 違いをもう一つ。これは私の居た会社の例えですが、日本には正月やゴールデンウィーク、夏休みなどの連休があります(それプラス祝祭日と、なんと言っても年2回あるボーナスは忘れられません)。

 アメリカの会社は、よくてサンクスギビングデー、クリスマス、元旦それぞれ一日だけです。ボーナスはなし。でも、日本ではとりづらいとされる有給休暇は1週間から2週間、毎年休みをもらっています。

 以前ルイジアナ州に住んでいたことがあり、メキシコ湾へはクルマで30分くらいでした。このメキシコ湾内には「オイルリグ」と呼ばれる石油掘削のプラットフォームが4000箇所近くありました。オイルリグで必要なものはすべて船で運ばれます。

 メキシコ湾沿いにある5つの州(テキサス、ルイジアナ、ミシシッピ、アラバマ、フロリダ)から、オイル会社がオーダーした荷物をフラットベッド(平ボディ)トレーラでピックアップして船まで届けるという仕事もしていました。

 家を離れて、2週間に1度、週末に休みを希望するならば休んでいいという会社でしたので、トラックのスリーパーで寝ていました。実は日本でも、一時期ですが地元の東京から静岡、名古屋、大阪、千葉と、トラックの中で寝ていた頃がありました。

 でも、やはり家を離れていると、いつも不安がつきまといますね。その後、北カリフォルニアのSonoraという町にある七面鳥のファームで、運搬にかかわる仕事に転職しました。

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