元ベテラン運転手 トラさんの「泣いてたまるか」 No.27

元ベテラン運転手 トラさんの「泣いてたまるか」 No.27

トラックドライバーの誇り その25

その頃の運行の形態は、大まかに言えば現在とほとんど変わらないと思う。積み込みが終わって出発した時は、ドライバーにとってホッとできる一瞬でもある。その後はどこかで食事をして、行き先を考えながら、自分なりのコース設定や時間配分などを決める。
関東方面に行くときは、まず東京に入る時間帯を考えないと、東名であれ中央道であれ、渋滞に巻き込まれ延着の原因になってしまう。私は、東名の用賀、中央道の八王子ともに、遅くとも6時を設定していた。
他の地域だとこんな早い時間設定はしないのだが、東京という万年渋滞の名所では、早く抜けることを考えるため、その分ドライバーの負担は増える。

ドライバーの心理として、次の予定が決まってなくても、いや決まっていないからこそ、早く荷降ろしを終え仕事を決め、ゆっくりしたいと思うものだ。荷物を降ろさない限り、水屋は次の予定は教えてくれないのが一般的だから、空車になってからのことが分らないために、ある種の不安がつきまとう。
当時、携帯電話はそんなに普及していなかった。当然、公衆電話を見つけては、ドライバーの方から連絡を入れていた。どこでも、一時間おきというのが当り前だった。つまり、帰りの仕事が決まらないと、おちおち仮眠が出来なかったのだ。
現在は、仕事が決まると携帯電話で知らせてくれるので、ドライバーは安心して仮眠だけは出来る。もちろん、当時とは違い、アイドリング規制があるので、違う意味で仮眠は困難になってはいるが……。
やっと、次の積み込みが決まっても、それからの移動と積み込みなので、日中に仮眠を取れる時間はほとんどなかった。

三重県の伊賀地区から東京を6時と考えると、所要時間が10時間としていたために、よほど早く出発できないと、国道を途中の仮眠は2~3時間しか取れないのが普通だった。足りない分は高速を使っていた。だから、日中の仮眠がどうしても欲しいのだが、出来ることは稀だった。
そのような状態で週3回という運行をしていたのだから、当然、万年寝不足状態だった。ある時、Pと書かれている道路脇で仮眠をした時である。先客の大型の5mくらい後ろに停め、座席シートを後ろに倒し寝ていた。ふっと目が覚めた時に、ぶつかる! と、一生懸命にブレーキを踏んだことがある。完全に寝ぼけ状態で、自分が仮眠を取っていたことを忘れていたのだ。
この寝ぼけた状態は、睡眠不足と疲れが原因だと考えられるが、これが、実は運転中にもあるのは、ドライバーの皆さんは体験済みだと思う。私も何度もあるので、次回はそれに触れたい。

トラさんのブログ「長距離運転手の叫びと嘆き」
http://www.geocities.jp/boketora_1119/

DSCN5858.JPG

 

最新号

【特集】進化の極みへ ボルボFH2025年モデル フルロードvol.58 本日(9/10)発売!!

【特集】進化の極みへ ボルボFH2025年モデル フルロードvol.58 本日(9/10)発売!!

自動車雑誌ナンバーワンの「ベストカー」が自信をもってお送りする本格派のトラックマガジン!! 今号では…