恐山~死の彷徨 その3
おぼろげなみんなの記憶を繋ぎ合わせると、その日はいつもとは様子が違っていたようです。「何だか盛り上がらなかったんだよねえ…」ということなのですが、その主たる原因はお祭り男のガミさんのテンションが一向に上がらなかったことにありました。
で、僕とガミさん、さらに先に紹介した3人は、コバヤシさんも交えて珍しくボソボソと近年の世相などについて語り合っていたのですが、ヒサシさんがふと思い出したように「そう言えば、ガミのところは今年、喪中だったよなあ」と言い出しました。これが地獄の扉を開く呪文だったのですが、口にしてしまったら後の祭り。
実は、実は…。
このシリーズで準レギュラー化(?)しつつあったガミさんの「エラ~イお父様」が前年の秋、亡くなっていたのです。ガミさんはそういう話を一切、会社ではしなかったので、運転手仲間は誰もそのことを知らなかったのですが、さすがに古い付き合いのヒサシさんたちはそのことを知っていて、山ちゃんはお通夜に行ったとか…。
そこから話題はガミさんのお父さんの想い出話になり、さらに「いかにガミさんが親不孝な息子だったか」に話が移り、その日はお父さんを想い出してか、妙にしんみりしていたガミさんが格好の酒の肴になって、時は流れていったのでした。
それだけならよかったのですが、そこでかなり酔っ払ったガミさんが「もう一度会えるなら、オヤジに一言、謝りたい」などと神妙なことを言い出し、何となく話の雲行きが怪しくなってきました。(さあ、いよいよですよぉ~!)
突然、「だったらガミをオヤジさんに会わせよう!!」とヒサシさんが叫びました。夕方、早い時間からハイピッチで飲み続けたヒサシさんは、いつにも増して泥酔、グデングデンの状態です。ナイスが「どうやってぇ~!?」と合いの手を入れると、ヒサシさんはいつになく真剣な顔で(この人が真剣になるとろくなことがないんだけど…)「恐山に行って、イタコにガミのオヤジさんを口寄せしてもらう」と言い出したのです。(あははっ、何を言い出すかと思ったら…。でもひょっとして本気?)
普通なら「バカなこと言って…」の一言で済む話なのですが、そこがそうならないのが新宿ナカヨシ会の尋常じゃないところで…。山ちゃんが「それはいい考えだ!」(どこが!?)と言い出し、話の流れは行くことを前提条件に「どうやって恐山まで行くか?」という方法論に発展。(まったく、この人らは何を考えているんだか…!!)ナイスが「新宿には24時間やっているレンタカーがある」と言い出しましたが、さすがに「これだけベロベロだと、車は貸してくれないだろう」ということで、事態は無事にお開きの方向に進みかけたのです、…が…。 (つづく) 山高一浩