<馬力アップ>
最近のトラックは同じエンジンで複数の馬力の車を用意している。以前カタログ制作を担当していた時に、マイナーチェンジで同じ型式の車が5馬力アップしたことがあった。「5馬力くらいのアップならターボの過給圧をちょっといじるだけでしょう」と開発の担当部長に言ったら、「とんでもない。エンジンだけでも負荷が変わることで耐久性、温度管理、燃費、排出ガス、そして電子制御まで広範囲に検証が必要なので、たとえ5馬力でも大変なのだ。さらにクラッチ、ミッション、デフまで含め駆動系にも影響を与えるので、全て実験してOKを出すには並大抵の工数ではない。しかも届出資料も作成しなおすので開発全体ではものすごい労力をかけている。カタログでは5馬力でもそれは大きな5馬力なのだ」と言われてしまい、認識を新たにした。ターボエンジンは、特にほんの少しの圧力調整で馬力が変わってくるので、製造工程も難しいと思う。
乗用車の世界では、小排気量ターボエンジンで燃費と性能の両立を図っていく傾向がみられ、複数馬力も増えているが、トラックのディーゼルエンジンは昔からターボでなくても複数馬力が存在している。特に排出ガス規制が厳しくなってからは、エンジンの小排気量化とターボ化が必須条件とも言えるようになった。ターボの性能も上がり低回転から高トルクを発生できるので急激なトルク変化もなく、いわゆるドッカンターボではなくなった。
超高圧噴射やアドブルー制御などトラックのエンジンはもはや精密機械のようである。
(社団法人日本自動車工業会モーターショー室長)