愛知県江南市のリュウエイ機工が導入した「スイングPlus」は、東京都江戸川区に本社、千葉県佐倉市に工場を置く架装メーカー、司工業が製作した重機運搬車である。
重機運搬車とは、その名の通りパワーショベルやブルドーザーなど建設機械(重機)の運搬を行なうトラックのこと。フォークリフトや自走式高所作業車の運搬を専門で行なう車両も存在し、それらを含めて産業車両運搬車と総称することもある。
リュウエイ機工では、これまでスライド式の重機運搬車をメインで使用してきたが、今回の「スイングPlus」は司工業が独自に開発したスイング式を、さらに一歩進化させたもの。一体どんな特徴があるのだろうか?
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
※2019年6月10日発売「フルロード」第33号より
リュウエイ機工は精密機械や工作機械、プラント設備など各種機械設備の搬入/据え付けのスペシャリストで、主に愛知、静岡、三重の工業製品を全国各地に届けている。搬入/据え付けにはフォークリフトが不可欠なことから、トラックはフォークリフトも運べる重機運搬車がメインだ。
重機運搬車は、各種重機の積み降ろしを安全かつスピーディに行なうため、荷台を傾斜させる機構を備えており、荷台を傾斜させる方式によっていくつかのバリエーションが存在。なかでも代表的なのが、セルフ式とスライド式の2種類だ。
セルフ式は、車両前方のアウトリガーで車両を持ち上げて荷台を傾斜させるオーソドックスな方式。構造がシンプルなため頑丈で壊れにくいとされており、幅広い用途で使用されている。
いっぽうスライド式は、荷台を後方にスライドさせてから傾斜させる方式。床下にスライド機構を備えるため構造がやや複雑で、積み降ろし作業時は後方に広い作業スペースが必要だが、傾斜角度を緩やかにできるのが強み。
このほか、荷台の後ろ側だけを傾斜させる方式も存在し、司工業では「テールオート」という製品名で製造販売を行なっている。
リュウエイ機工ではこれまで、スライド式の重機運搬車をメインで運用してきたが、都市部など作業スペースが限られる現場では積み降ろしに苦労することもあり買い替えを決断。白羽の矢を立てたのが、司工業が開発した初代スイングボディだったという。
司工業が2017年に発表した初代スイングボディは、いわば第4の重機運搬車で、キャブバックに搭載する油圧シリンダーで荷台を傾斜させるもの。スライド式に比べると荷台傾斜角度は劣るが、荷台を後方にスライドさせるためのスペースが不要なため、狭い現場で使いやすいメリットがある。
今回の「スイングPlus」は、都市部で重宝するスイングボディをさらに進化させたもの。具体的には、スイングボディの機構にテールオートの機構を組み合わせ、荷台を前後別々に傾斜させることを可能としたものだ。
なぜ前後別々に傾斜させる必要があるのかというと、フォークリフトのサイズによっては荷台全体を傾斜させる必要がないこともあるから。荷台全体を傾斜させた状態で一番前まで登ると、けっこうな高さとなり、転落事故の恐れなどもあることから、状況に応じて使い分けるのがベストなのだという。
なお、スイングPlusはスイングボディとテールオートの機能を合体したものだが、構造的には別モノ。特に後ろ側の荷台を傾斜させる仕組みに関しては、シャシーフレームをカットして専用ブラケットを装着、ブラケット内側の油圧シリンダーで傾斜を行なう新機構が採用されている。
ベース車両は、三菱ふそうスーパーグレートFS系4軸低床フルエアサスシャシー。架装に伴うエアタンクの移設、燃料タンクの追加、作動油タンクの追加とそれに伴う巻き込み抑制装置の取り外し、アドブルータンクの移設など、多岐にわたるシャシー改造は三菱ふそう子会社の架装メーカー、パブコが実施した。
荷台は7方開の平ボディ型で、荷台内寸は長さ9300mm×幅2390mm。根太構造は、横根太を縦根太に貫通させる低床工作を実施しており、厚さわずか21mmのアピトン床材との組み合わせで床面地上高1070mmを確保。背の高い積み荷にもしっかり対応する。
なお、床材の薄さによる強度低下を補うため、横根太は通常より本数を増やしており、300mmと詰め気味のピッチで配置することで強度を確保。集中荷重がかかる重量物も安心して積載可能という。荷台傾斜角度は通常時10.9度、エアサスダウン時で10度となっている。
リュウエイ機工によると、状況に応じて前後荷台を自在に傾斜させることができるスイングPlusは都市部の現場でも好評とのこと。司工業ではスイングボディシリーズのバリエーション拡充を図っており、今後のさらなる開発動向にも注目だ。
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