水素を自動車の燃料として活用するならその供給インフラも必要になるが、なかなかインフラ整備は進まない。北米トヨタは燃料電池トラック向けに移動式の水素供給装置を導入した。また軽油と同等の充填時間を実現するため、高圧供給に向けた技術開発も進めている。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Toyota Motor Sales, U.S.A., Inc.・Hyroad Energy
北米トヨタが移動式の水素レフューラーを導入
トヨタ・モーター・ノース・アメリカ(北米トヨタ)の水素事業部は、燃料電池電気自動車(FCEV)の大型トラックをトヨタの米国向けフリートに導入することを目指して、水素燃料の供給技術の改良を進めている。
同社は2026年10月20日、米国で最大の部品配送センターになっている北米部品センター・カリフォルニア(NAPCC)に移動式の水素ステーションを2台配備したと発表した。
(タンクローリ/タンクトレーラから燃料を直接補給できるようにした特装トラックは、一般に「レフューラー」と呼ばれ、航空機への給油などで活躍している。不足する水素インフラを補うために、同様のコンセプトで車両への水素供給を可能としたものが移動式水素ステーションだ)
ロサンゼルス港からオンタリオ、そしてこの地域全体に貨物を輸送するトヨタの物流フリートは、水素レフューラーの利用が可能となったことでFCEVトラックへの燃料供給体制が強化された。将来的には常設の水素供給ステーションを建設する計画もあるという。
移動式ステーションは、当初は北米トヨタが提携するハイロード・エナジー社が導入しているFCEV大型トラック(トヨタ製FCスタックを搭載するケンワースのT680をベースとするFCEVトラックや、ニコラのトレFCEVなど)に水素を供給するという。ハイロードに続いて、トヨタ独自の燃料電池パワートレーンを搭載するトラックにも水素を供給する予定だ。
ハイロードはニコラの破産後に同社の資産(トラックを含む)・知財を取得した会社で、トヨタのNAPCCに水素トラック40台を投入すると発表している。今年7月には同社も移動式の水素ステーションを導入していた。
北米トヨタの水素レフューラーと同型かは不明だが、ハイロードの発表によると、液体窒素容器などを製造する米国テイラー・ウォートン社(エア・ウォーター・アメリカの子会社)製の移動式水素ステーションは、1000kgの液体水素を搭載可能な極低温タンクを架装したトレーラで、ポンプ、ディスペンサー、制御装置、安全システムなどを一つのパッケージにまとめたものだという。
常設型の水素インフラが普及するまで、FCEVの稼働を支えるのはこうした移動式の水素ステーションとなりそうだ。
次世代の水素供給システムの構築に向けて
また、トヨタは米国エネルギー省のロッキーズ国立研究所と協力し、大型トラック向けに気体の水素を70MPaという高圧で供給する高流量水素充填などの技術開発を進めている。
この圧力だとトラックは最大で一秒あたり300gの水素燃料の供給を受けられ、これは小型車向けの充填技術の5倍の速度に相当する。バッテリーEVの充電電力に換算すると20MWに相当し、実用化されている最大電力の充電器と比較しても10倍以上の速さでエネルギーを供給できる計算だ。
なお、軽油の給油時間はこれとほぼ同じで、エネルギーキャリアとして軽油は優れた特性を備えていることがわかる。ただし、水素燃料電池はディーゼルエンジンと異なりCO2を排出せず、水のみを排出する。
トヨタとロッキーズ研究所の研究者およびエンジニアは SAE J2601-5 という規格に基づいて複数回の燃料供給試験を実施し、トヨタ製パワートレーンを搭載するトラックでは、8分間の水素供給で最大450マイル(約725km)を走行できることを実証した。量産型トラックとしては2027年に(米国で)商用運行を開始することを目指している。
北米トヨタは今後数か月間で、自社が所有する燃料供給インフラを大型トラックに対応する高流量型にアップグレードするという。小型FCEV向けには新たな設備を導入することにしており、こうした取組を通じて水素ステーションのハードウェアを評価し、実運用における信頼性向上に役立つ知見を共有する。
NAPCCの常設型ステーションは、稼働を開始すれば一般にも公開される予定だが、大型トラック用の高流量型とは別に、小型車向けの供給エリアを別途設けるそうだ。
トヨタは大型車や商用車に加えて、定置式発電機や小型乗用車向けでも燃料電池技術の開発・改良を続けており、パワートレーンだけでなく過去・現在・未来の車両の稼働をサポートすることもこの取組に含まれている。
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