北米トヨタは米国のFCエナジー社と共同で世界初の「トライジェン」システムが稼働を開始したと発表した。バイオガスから再生可能電力と再生可能水素、そして水を同時に製造する技術だ。
オンサイトで発電した電力はトヨタの事業に活用し、余剰分は地域に供給する。水素は車両運搬車など燃料電池トラックの燃料となり、副産物として生成される水は洗車に使うなど無駄がなく、持続可能な未来に向けた最先端の取組となっている。
文／トラックマガジン「フルロード」編集部
写真／Toyota Motor Sales, U.S.A., Inc.
トヨタの北米拠点に世界初のシステム
燃料電池と再生可能エネルギー技術を開発している米国のフューエル・セル・エナジー・インク（以下、FCエナジー）と、トヨタの北米事業を統括するトヨタ・モーター・ノース・アメリカ（以下、北米トヨタ）は、2024年5月2日、米国カリフォルニア州のロングビーチ港で世界初の「トライジェン」システムが稼働を開始したと発表した。
トライジェンは、バイオガスから再生可能電力と再生可能水素を製造し、副産物として再利用可能な水を排出するシステムで、施設は昨年竣工していた。
このシステムがロングビーチのトヨタ・ロジスティクス・サービス（以下、TLS）の車両加工及び配送センターを支える。同所は「トヨタ」と「レクサス」ブランドの車両を年間で20万台受け入れている、北米最大級の拠点となる。
北米トヨタのグループ副社長で持続可能性＆規制担当のトム・ストリッカー氏は次のように話している。
「FCエナジー社との提携の目的は、ロングビーチにあるTLSの車両加工施設に持続可能なソリューションを見出し、弊社の事業によるCO2排出をなくすことです。この画期的なシステムは、水素に基づくスケーラブルな技術と共に、天然資源への負担と排出量を削減する道筋があることを示しています」。
乗用車メーカーのトヨタだが、北米では大手トラックメーカーのケンワース（パッカーグループ）などと提携し、燃料電池大型トラック（北米のトラック区分で最も重い「クラス8」トラック）の開発を続けてきた。パッカーの燃料電池トラックにはトヨタ製のパワートレーンキットが採用されている。
電力と共にトライジェンで製造される水素は、車両運搬車などの燃料に活用し、事業の更なる脱炭素を推進する。FCエナジーのトライジェン・プラットフォームによりTLSロングビーチはトヨタとして初めてオンサイトで100％再生可能電力を発電し利用する施設となる。
トライジェンに採用されているFCエナジーの燃料電池技術は、バイオガスを効率的に電気・水素・水に分解する電気化学プロセスを活用しており、火力発電の燃焼プロセスのような大気汚染物質は排出されない。
同社の説明によると、この燃料電池は自動車用とは異なり高温で反応させる必要があり副産物としてCO2が発生する。ただ、大気中に放出されないように回収し、飲料グレード（炭酸飲料の原料に使える純度）まで精製した上で、販売したりオンサイトで産業用ガスとして活用するという。
FCエナジーのCEO兼社長のジェイソン・フュー氏のコメントは次の通りだ。
「トライジェンは水素エネルギーの活用がビジネスに利益をもたらし、小型車だけでなく大型トラックによるゼロエミッションの輸送を可能にします。さらに、地域の空気の質を改善し水の利用量を減らすなど、環境に対して短期・長期で良い影響を与えます。
弊社は、トヨタのような先進的な企業が事業の脱炭素を実現し、水素エネルギーによるソリューションを活用できることを目標に活動しています。こうすることで地域社会には綺麗な空気が残り、電力網の負担軽減や水道利用量の削減といった利益を享受できます」。
電力網における再生可能でレジリエント、そして低廉なベースロード電源となることが期待されるトライジェンは、2.3メガワット（MW）の発電能力をもっている。その一部がTLSロングビーチの事業活動に消費され、余剰電力は地元の電力会社（南カリフォルニア・エジソン）に融通される。これは州のバイオエネルギー市場調整税（BioMAT）プログラムに基づくものだ。
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