2026年4月1日、ボルボ・グループは水素を内燃機関で燃焼する「水素エンジン」を採用したトラックの路上試験を開始したと発表した。
同社の天然ガスエンジンで実績のあるHPDI技術を水素エンジンにも適用し、ディーゼル車に引けを取らない性能とゼロ排出を両立したという。
脱炭素化にむけて、バッテリーEVと燃料電池、そして再生可能燃料による内燃機関の3つの道があるとする同社は、2030年までに業界をリードする最先端の水素ソリューションをローンチし、商用化することを目指している。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/AB Volvo
ボルボが「水素エンジントラック」の路上試験を開始
スウェーデンの大手商用車メーカー・ボルボは水素を燃焼する内燃エンジンによる大型トラックの路上試験を開始し、輸送におけるCO2排出量のネットゼロ実現に向けて、新たな一歩を踏み出した。
ボルボの水素エンジントラックはエネルギー効率が高く、省燃費性能やエンジン出力などにおいて業界をリードするパフォーマンスを誇るという。それを実現するのが高圧直噴(HPDI=High Pressure Direct Injection)技術だ。
これは、内燃エンジンでメイン燃料を噴射する少し前に、少量のパイロット燃料(軽油、もしくは同等性状の燃料)を高圧で噴射し圧縮着火を実現するもので、火花点火式エンジンより効率的な燃焼が可能とされる。
ボルボはガスエンジン(天然ガストラック)にHPDI技術を採用しており、既に1万台以上を販売した実績がある。
ボルボ・トラックスで製品管理を担当するヤン・ヘルムグレン氏は次のように話している。
「水素内燃エンジンの実用化に向けて、路上試験の開始は重要な節目となります。燃費効率、馬力とトルク、操縦性能を見ていただければ、これが業界最高水準のものであることを理解していただけると確信しています。水素エンジントラックは、ディーゼル車と全く同じように運転することができます。1万台を超える天然ガストラックが、HPDI技術のパフォーマンスを強力に証明しています」。
HPDI技術では、水素のほかに点火用の燃料が必要となるが、いずれも再生可能燃料が利用可能で、「グリーン水素」と「HVO」の組み合わせなら、ウェル・トゥ・ホイールでCO2排出量のネットゼロを実現可能だ。
なお、グリーン水素は再生可能エネルギーのみを使って製造されて水素を指し、HVOは廃植物油(いわゆる「天ぷら油」)等に水素化処理を施して軽油と同じようにディーゼルサイクルで燃焼可能としたバイオ燃料のこと。EUのCO2排出基準では、この組み合わせで使用する場合は「ゼロエミッション車(ZEV)」に分類される。
水素エンジントラックは、特に長距離輸送や充電インフラへのアクセスが限られた地域、もしくは充電時間が限られる用途など、電動化が難しい分野の脱炭素化で期待されている。
ボルボの水素燃焼エンジン
ボルボの水素エンジンは、ディーゼルパワートレーンから派生したもので、同等の性能を維持しながらCO2排出を大幅に削減する。
効率的な燃焼を可能にするHPDI技術はボルボとウェストポート・フューエル・システムズが合弁で設立したセスピラ社が提供するもので、水素エンジントラックの航続距離は多くの顧客が1日に必要とする走行距離を上回るという。
水素は燃焼してもCO2を排出しないのでEUの基準ではゼロエミッション車に分類されるが、窒素酸化物(NOx)などの有害物質は排ガスとして排出される点には注意が必要だ。
また、圧縮点火用の燃料はCO2を排出する。このためグリーン水素+HVOの組み合わせはWTW(ウェル・トゥ・ホイール=エネルギーの生産を含む全体の排出)でゼロ排出となるが、TTW(タンク・トゥ・ホイール=車両単体での排出)はゼロではない。逆に、バッテリーEVはTTWでゼロ排出だが、発電側がゼロ排出とならない限りWTWでの排出がゼロにはならない。
燃料電池トラックも燃料として水素を利用するが、排出するのは水蒸気のみで、有害な排気ガスを(WTWでも、TTWでも)一切出さない。ボルボは燃料電池トラックについても2030年までに少量生産で発売する予定だ。
同社はネットゼロ実現に向けた戦略として3つの「パス」を掲げている。バッテリーEV、燃料電池電気自動車、再生可能燃料を使った内燃エンジンの3つだ。これにより、水素エンジン、バイオガス、HVOを利用するディーゼル車などの内燃機関と、電気駆動技術がお互いを補完する関係を目指している。
「水素エンジントラックには大きな可能性があり、排気ガスを出さない輸送への変革に向けて重要な役割を担うでしょう。脱炭素化のためには様々な技術が必要となります。グローバルなトラックメーカーとして、私たちはあらゆるソリューションを提供し、お客様が自身の事業に最適な選択肢を選べるようにします」。
(ヘルムグレン氏)





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