ドイツ政府の要請でEUの「エンジン車禁止」方針が撤回されると報じられており、ハイブリッド技術に追い風が吹いている。ZFは大型トラックをハイブリッド化する新型トランスミッションを昨年発表しており、試作車による実証試験を運送会社で行なった。
プラグイン・ハイブリッドは実績のある量産可能な技術だが、シミュレーション上は最大73%のCO2削減が可能で、航続距離などを犠牲にすることもない。ZFの新型トランスミッションは専門誌による賞も受賞しており、実用性とコスト効率などを専門家も高く評価している。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/ZF Friedrichshafen AG
ZFが大型トラックの「プラグイン・ハイブリッド」を試験
ドイツの自動車部品サプライヤー・ZFは、昨年のIAAモビリティで発表した大型商用車をハイブリッド化する新型トランスミッション「トラクソン2ハイブリッド」を実際の使用環境で試験している。
試験はドイツの道路運送・物流・廃棄物処理協会(BGL e.V.)に加盟する運送会社と共に実施するもので、貨物輸送から廃棄物の運搬まで試作車を使った試験を行なっているそうだ。
初期の評価は良好だといい、ハイブリッド技術は現代のフリートのニーズを満たしながらCO2排出量を大幅に削減し、さらに総保有コスト(TCO)の低減にも貢献することが確認された。
ZFの商用車ソリューション(CVS)部門でトランスミッション&ハイブリッド製品を担当する副社長のクリスチャン・フェルトハウス氏は次のように話している。
「新開発のトラクソン2ハイブリッドが、メーカーと運送会社に長期的かつ具体的な付加価値をもたらすことは明らかです。私たちは商用車にとってハイブリッドパワートレーンが重要な技術になると考えています。
1日あたりの走行距離が長い用途、つまり長距離輸送用のトラックでは充電インフラに依存しない実用的なソリューションが必要です。ハイブリッド技術はCO2削減目標を達成しながら、コスト効率の面でも強力な経済性をもたらします」。
また、BGL e.V.の技術部会責任者であるロジャー・シュバルツ氏は次のように付け加えている。
「私たちの業界が最も重視している効率・信頼性・持続可能性において、この技術は理想的な組み合わせです。欧州で充電インフラが広く利用可能になるまで、ZFのハイブリッドシステムは実用的なソリューションであり、加盟企業がフル電動に至るまでの道筋を提供するものとなります」。
EUは「エンジン車禁止」を撤回か? PHEVに追い風
トラクソン2ハイブリッドは全体としての効率を改善しながらCO2排出量を削減し、航続距離と燃料の補給(もしくは充電)にかかる時間は従来と同等の水準を維持することを目指して開発された。
トランスミッションに電動モーターなどを組み合わせ、大型トラックのハイブリッド(HEV)/プラグインハイブリッド(PHEV)を実現する。その汎用性の高さから様々な車両アーキテクチャにシームレスに統合でき、ディーゼル車のほか、HVO(水素化処理された油脂で、軽油と同じように扱える代替燃料)、eフューエル(CO2から化学合成する燃料)、CNG/LNG(圧縮/液化天然ガス)、さらには水素燃焼エンジンと組み合わせることも可能だ。
VECTOシミュレーションツールによる計算上、定期的な充電を前提としたPHEV大型トラックは、長距離輸送で43%、集配送で73%のCO2削減ポテンシャルを示している。これは2030年を目標年度とする欧州連合(EU)のフリート向け削減目標に直接的に貢献するほか、将来的に計画されているバッテリーEV(BEV)による通行料の免除や税控除の対象となる可能性もあるという。
そのEUだが、最近の報道によると「2035年に内燃エンジン車を禁止する」としていた方針を撤回し、PHEVなどを認めることを求めていたドイツ政府の要請に前向きな姿勢を示している。ZFは高速道路などでの車両区分についてPHEVトラックとBEVトラックを同じにするというドイツの要請を支持している。

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