ドイツの防災組織・THWは2025年8月22日で75周年を迎えた。そのTHWに新型の機材トラックとして75台目のアテーゴが納入され、装備の近代化が進んでいる。
ドイツ国内のみならず国際救助にも活躍する最新の防災用トラックは、地震・津波・台風など自然災害の多い日本としても気になるところだ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Daimler Truck AG
75周年のTHWに75台目の「アテーゴ」トラック
ドイツ連邦の技術支援庁(THW=テーハーヴェー)は政府による公的防災組織の先駆けで、第一次世界大戦後に民間防衛部門として組織された前身のTeNoを改組する形で1950年8月22日に設立されている。
75周年となる今年、メルセデス・ベンツの「アテーゴ」をベースとする75台目の新型機材トラックが納入され、装備の近代化が進んでいる。
同車はBINZオートモーティブが架装を担当する特殊な上部構造を備え、同型車が120台発注されている。また、THWは必要に応じて60台を追加発注することができるという。
機材トラックはTHWの災害救助において中心的役割を担う緊急車両で、四輪駆動と高積載、そして大量の資機材を収納するスペースを備えている。
新型車はTHWのためにダイムラー・トラックとBINZが緊密に連携して開発した車両であり、輸送能力と乗員スペースの近代化、戦術的な汎用性を兼ね備えている。災害救助組織の能力を強化する上で欠かせない車両だ。
ベース車両の「アテーゴ1530 AF 4×4」には220kW(299hp)の6気筒ディーゼルエンジンが搭載され、全輪駆動のシャシーはディファレンシャルロック機能と水深800mmでの渡河能力を備え、不整地でも運用できる。
総重量16トンに対して積載量は3.6トン以上。タイヤは前軸がシングル、後軸がダブルとなる。回収作業などに使う50kNの油圧式ケーブルウィンチを搭載しており、ケーブル長は半減するが後方への張力は100kNに倍増する。
緊急車両の架装はBINZが担当
いわゆる上物(うわもの)を担当する架装メーカーのBINZは、特殊車両の製造に85年以上にわたり携わってきた専門メーカー。業界をリードする企業の一つで、レスキュー、消防、警察、救急などの部隊に向けて高度にカスタマイズされた車両を開発している。
架装コンセプトは顧客との綿密な協議に基づいて設計され、個別に正確にフィットするように作られている。もちろんこれはTHWの新型機材トラックにも当てはまる。
救助隊の過酷な任務に耐える耐久性と耐腐食性を実現するため、ボディ構造はアルミニウム製になっている。これは自重の軽減にも効果があり、総重量16トンのトラックにしては高い積載量を誇る。また、様々な機材を収納するため数多くの専用ストレージを備えている。
ドライバーキャブの後ろに設置した乗員用の「ドッキングキャビン」はこれまでで最大規模のものとなり、対向シートには70cmの距離で7席が配置されている。足元のスペースが拡大し、長距離移動時や作業用の装備を着用する際の快適性が向上した。
シートにはUSBソケット、手すり、3点式シートベルトのほか、全席にヘルメットホルダーと無線機ホルダーが備えられ、現代的なクルーキャブを実現した。運転席とクルーコンパートメントの間には接続トンネルがあり、やり取りが可能。
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