テスラの電動大型トラクタ「セミ」の発表は2017年だった。当時は半ば夢物語だった大型トラクタの電動化だが、今では米国の大手トラックメーカーの大半がBEVトラクタをラインナップしている。
テスラ・セミは発表から9年、予定より7年遅れで2026年に量産を開始するようだ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Tesla
2026年にテスラ・セミを量産化?
テスラが大型電動トラクタの「セミ」を発表したのは2017年11月のことだった。バッテリーEVの先駆者である同社が、クラス8(米国のトラック区分で最も重いクラス)トラックを準備していること明白だったが、500マイルの航続距離など発表されたスペックは大方の予想を超えており、衝撃が広がった。
いっぽうで実現する可能性を含めて大型トラックの電動化は時期尚早ではないかという見方が当時は多かった。
テスラのイーロン・マスクCEOは、セミは性能や経済性において何かを犠牲にすることなくディーゼルエンジンの大型トラックに対抗できる実践的なトラックにすると話していた。
発表当初、納車開始は2019年とされていた。ただ、納車時期は何度も延期され、2022年末にペプシコに第1号車が納車されている。これは量産前の「パイロット版」という位置づけだ。
マスク氏は年間の「セミ」製造台数を5万台にすると話しているが、パイロット版としてこれまでに製造されたのは100台にも満たないだろう。
2025年4月29日、テスラは公式ユーチューブチャンネルで「セミ工場の進捗状況」を公開し、本格的な生産準備を進めていることを明らかにした。ネバダ州リノの新工場で2026年から量産を開始するとみられ、実に9年間もの眠りから覚めたセミがいよいよ地上に姿を現しそうだ。
過去数年間の間にパイロット版のセミが顧客に届けられており、実際の輸送の現場で活躍している。大型トラックは乗用車とは全く異なる車両だが、テスラにとってはその使命を果たすために不可欠の商品だという。
セミが発表された2017年当時、大型トラックの電動化には懐疑論も多かった。それから8年が経った今では、米国の大手トラックメーカーも大半が電動の大型トラクタをラインナップし、BEVのモデルチェンジを発表するメーカーも出てきている。電動化の先駆者だったテスラは、商用車では後を追う立場に変わっている。
テスラは今後数カ月をかけて新工場の設備を整え、量産に向けた準備を進める。最初の量産車は2025年の年末までラインに投入され、2026年中に出荷を開始する予定。年間の生産キャパシティはマスク氏が公言する通り5万台となるようだ。
また、テスラの「セミ」プログラムを率いるダン・プリーストリー氏は、米国で開催された運送業界のトレードショー「ACTエキスポ」で1.2メガワットという大電力を扱える「V4充電アーキテクチャ」を紹介した。
トラックの電動化では後れを取ったテスラだが、充電規格では依然として優位な立場にあり、乗用車用システムと共通化したメガワット級の充電器により実用性を高めることで商用車での巻き返しを図っている。
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