発売から60年以上が経っても現役のモデルで、北米のトラックドライバーから時代を超えて愛されたケンワースの大型トラック「W900」が2026年で生産終了となる。トラックは仕事の道具ではあるが、W900は大陸を駆けるアメリカントラックという「文化」の象徴でもあった。
排ガス規制の強化や安全装備などコンポーネントの義務化などが進み、より効率的なトラックが求められ、メーカーは「困難だが必要な決定だった」としている。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Kenworth Truck Company
ケンワースが2026年にレガシートラックの生産を終了
米国の大手トラックメーカー・ケンワースは2025年3月19日、同社のレガシーである1.9メートルキャブのクラス8(大型)トラックの製造を間もなく終了すると発表した。
「W900」(W900L及びW900Bモデル)、「T800W」(ワイドフード)、「C500」などのトラックは2026年で生産を終えることになり、2025年中にこれらのトラックの最終注文をアナウンスする予定だ。
この決定は、より効率的な新しいテクノロジーをトラックに搭載していく中で、排出ガス規制の強化や安全装備などのコンポーネントの義務化が進んだことによるものだという。
同社のセールス&マーケティング担当副ゼネラルマネージャーのケビン・ヘイグッド氏は次のようにコメントしている。
「こうしたケンワースのレガシーモデルは、弊社の歴史に不可欠な一部分であり、今回の決定は困難なものでした。しかし、トラック輸送が次の時代を迎えるために必要な決定です。
新しい製品に移行するにあたり、私たちは革新と効率、そして何世代にもわたってお客様とドライバーが信頼を寄せてくれたのと同じレベルのクラフトマンシップを提供することで、ケンワースの象徴であったトラックの精神を受け継いで行きます」。
時代を超えたクラシックトラック「W900」
特にケンワースのレジェンドである「W900」シリーズは、同社のみならず北米大陸を駆けるボンネット型のアメリカントラックを象徴するクルマの一つだ。クラシックなロングフードと角ばったコンベンショナルデザイン、その耐久性とドライバー重視の快適性・スタイルは、米国のトラッカー文化の代名詞となっている。
1961年に発売されたW900はトラックドライバーの間で人気を博し、(何度かのモデルチェンジはあったが)60年以上が経った2025年現在も現役という「時代を超えたクラシックトラック」である。
生産財として効率性が何よりも重視される車両であるにも関わらず、W900がこれほど長く愛された理由は、その汎用性とカスタマイズ可能なプラットフォームによるものだという。
長距離輸送から重量物輸送、原木運搬やダンプなど、オンハイウェイ系の車両から米国で「ボケーショナル」と呼ばれる特装系の車両まで、同車はさまざま用途でドライバーが信頼できる選択肢となった。
ケンワースはW900の導入以来、特徴的な外観を維持しつつ、さまざまな仕事に対応するため、テクノロジー、スタイル、パフォーマンスの進化を取り入れてきた。
「W900A」ではエンジンの効率化のための冷却性能の向上、「W900B」はキャブのアップデートと冷却系の改善を行なった。また「W900S」はコンクリート業界向けに設計された。「W900L」ではパフォーマンスと外観のためにロングフードバリエーションが導入されている。
「W900は今日のアメリカントラックという『文化』を形成したという意味で、本当に歴史的なトラックです。トラックショーではよく見かけますし、映画やテレビドラマ、その他のイベントにもしばしば登場します。
そのクラシックなスタイルには愛好家も多く、生産終了が近づいていますが、今後何年にもわたって道路やトラックショーで見かけるでしょう」。(同氏)
ちなみに、ケンワース創立100周年となる2023年には、これを記念して「W900L リミテッドエディション」が発売された。
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