ドライバーに無償労働させる荷主に公取委が激おこ!? 「物流特殊指定」で初めての行政処分!

ドライバーに無償労働させる荷主に公取委が激おこ!? 「物流特殊指定」で初めての行政処分!

 物流の「2024年問題」を背景に、公正取引委員会が荷主対策に本腰を入れている。2024年11月には独占禁止法の「物流特殊指定」に基づく行政指導(警告)を15年ぶりに行なったほか、12月には同制度の創設以来はじめてとなる行政処分(確約手続)の通知を行なった。

 いずれもトラックドライバーに運送以外の業務を無償で行なわせたことなどに対する措置だ。また、11月には国交省の「トラック・物流Gメン」が大幅に拡充され関係当局での情報共有が強化されるなど、政府が荷主による悪質な行為に対する監視を強めている。

文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
図・表/公正取引委員会

オフィス家具のイトーキに「警告」

ドライバーに無償労働させる荷主に公取委が激おこ!? 「物流特殊指定」で初めての行政処分!
イトーキに対する行政指導(警告)の概要(公取委の資料より)

 公正取引委員会(公取委)は2024年11月28日、オフィス家具のイトーキに対して「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」(いわゆる「物流特殊指定」)に基づく行政指導(警告)を行なった。

 物流業界特有のルールを定めた物流特殊指定は、規模の大きな荷主(特定荷主)が個人を含む物流事業者に運送・保管を委託する場合の不公正な取引を禁じている。

 また、行政指導の「警告」は「勧告」などの上位にあたる最も強い行政指導で、警告を受けても是正されない場合は法的強制力を持った「行政処分」に移行する可能性がある。2004年に創設された物流特殊指定制度による警告は2009年以来15年ぶりだ。

 発表によるとイトーキは、オフィス家具の運送、搬入、組立て、据付け、搬出などの運送業務を委託していた複数の運送事業者に対して、付帯業務を無償で行なわせていたほか、「時間外費」を納品場所での業務に限定し、納品場所以外での業務に不払いがあったという。

 具体的には、納品先での組立て・据付けなど繁忙期の時間外労働に対して残業代を支払わなかった。さらに、物流倉庫で積み込みなどの付帯業務を無償で行なわせたほか、配送前後の夜間・早朝に行なわれる残材引渡し(梱包資材などを物流センターに返却したりする業務)に対しても対価を支払っていなかった。

 イトーキは「今回の行政指導(警告)を極めて重く受けとめており、委託先物流事業者との取引適正化に向けた取り組みを全社をあげて推進し、適切な関係の構築を進めてまいります」とするコメントを発表している。同社は、無償で行なわせていた役務に対する対価を過去に遡って支払うほか、取引条件を見直して書面化するなどの措置を講じるそうだ。

物流特殊指定ではじめての行政処分

ドライバーに無償労働させる荷主に公取委が激おこ!? 「物流特殊指定」で初めての行政処分!
橋本総業の違反被疑行為と確約計画の概要(公取委の資料より)

 いっぽう、公取委が調査を進めていた管工機材・住宅設備大手の橋本総業については、2024年12月12日に「確約手続に付す」として調査を終了した。

 確約手続は、独禁法違反の疑いがあるとされた事業者が改善のための「確約計画」を提出し、公取委が認定することで早期解決を図るという独禁法に基づく行政処分だ。物流特殊指定による行政処分は制度開始から20年ではじめてとなる。

 公取委の発表によると橋本総業は売上高が上位の優越的地位にあるが、運送業務を委託している物流事業者に対して、遅くとも2017年以降、次のような違反の疑いのある行為を行なっていた。

●一部の物流事業者に対し、当該事業者の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず、「お支払割戻金」と称して所定の代金から一定率を乗じて得た額を減じた。また、当該代金を金融機関口座に振り込む際の手数料を減じていた。

●一部の物流事業者との間で、1日当たりの業務時間やいわゆる「残業」に係る運賃について取り決めず、日又は月単位の定額運賃を設定し、法定時間外労働を要するような長時間の運送業務を、同種の業務と比較して著しく低い運賃で委託した。

●1日当たりの業務時間等について取り決めがあった一部の物流事業者に対して、この業務時間を超える業務に係る運賃について取り決めていないことなどから、時間外の業務を無償で行なわせていた。

●委託内容に含まれていない運送以外の付帯業務について、あらかじめ取引条件等を取り決めることなく、一部の物流事業者に無償で行なわせていた。

 橋本総業は、これらの行為を取りやめることや、物流事業者の損失に対して金銭的価値を回復すること(発表時点で25社に対して総額約3800万円という見込み)など、「確約計画」を公取委に提出していた。

 これについて公取委は、当該行為を排除するために充分な措置であり早期回復が図られると認め、確約手続の通知を行なった。なお、計画の履行状況は弁護士などの第三者による監視が義務化されており、この措置を今後5年間実施する。計画が実施されていない場合、認定を取り消し調査を再開することになる。

 橋本総業は「認定を受けました確約計画を確実に実施するとともに、独占禁止法遵守をはじめとするコンプライアンスの徹底を一層強化し、物流業者各位と真のパートナーシップを構築して、お取引先様のご期待に応えられるよう事業活動を進めてまいります」とするコメントを発表している。

 ちなみに、2024年11月には荷主の悪質な行為を取り締まる「トラックGメン」が体制を拡充し「トラック・物流Gメン」に改組され、11・12月を「集中監視月間」として情報収集を強化している。公取委など関係当局との情報共有も行なわれるそうで、物流の2024年問題を踏まえて、政府が悪質な荷主の取り締まりに本腰を入れている。

【画像ギャラリー】独占禁止法の「物流特殊指定」と最近の違反事例(4枚)画像ギャラリー

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