10月29日に開催された「ジャパントラックショー in 富士スピードウェイ2023」。
その会場でアリソンジャパンによる試乗会が開催され、アリソンATを搭載する中型車ベースの車両総重量20トン車「日野レンジャーGKミキサ」を試す機会を得た。その実力は!?
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
メーカー完成車・日野レンジャーGKミキサ
日野自動車の中型トラック日野レンジャーは、2017年4月のフルモデルチェンジにて旧モデルよりダウンサイズした5リッターのA05C型エンジンを採用し、同年9月より同エンジンを搭載するGVW(車両総重量)20トンの「日野レンジャーGK」を追加。
翌2018年8月より軽量な中型シャシーと小排気量エンジンを用いることで5㎥(リューベ)という高い積載量を誇るメーカー完成車・日野レンジャーGKミキサが発売された。
このGKミキサには、MTに加えてアリソン製トルクコンバーター式オートマチックトランミッション「アリソン3500」が標準設定される。
アリソン3500は、トルクコンバーターにより発進時のエンジントルクを2.35倍に増幅し、発進時にはMTと同等(MTの2速発進と同等のギア比)の駆動性能を実現。
操作性に優れる2ペダルのATでありながら、中型車用の小排気量エンジンでGVW20トンの大型車を動かすという、トルクが不足しがちなアイドリング回転付近の発進性能を確保している。
アリソンAT搭載のGKミキサは、ここ1、2年で首都圏を中心に採用する運送会社は増えており、アリソンジャパンの年間目標の50〜60台を大きく上回る約120台が出荷されているという。
アリソン3500搭載のGKミキサに試乗
ではその実力はどうだろう? 先ごろ行なわれたジャパントラックショー in FSWのイベントでGKミキサに試乗させてもらった。
今回の試乗会は、富士スピードウェイのサーキットの外周道路のアップダウンのある約6kmのコースで、試乗車(GKミキサ)には4トンの水を積載した状態。
アリソン3500にはバンプ式と呼ばれるセレクターが採用されていて、上から「R・N・D・L」、Dレンジから左セレクトで手動変速モードが備わっている。
このあたりは完成車の4トンダンプシリーズで標準採用されるアリソン1000等の「P・R・N・D・3・2・L」が一列に並んだIパターンのセレクターと少々異なる仕様だ(アリソン3500にはPレンジギアは設定されない)。
バンプ式では液晶も備わり、液晶の上段には最高段ギア、下段に現行ギアを表示。また液晶の上にある「MODE」ボタンを押すとパワーモードとなりディスプレイの端に「POWER」の文字が表示される。
早速、Dレンジに入れてアクセルを踏み込むと、回転数の上昇とともにトルクコンバーターによって滑らかに動力がタイヤに伝達。小排気量ゆえ、さすがに軽快な走り出しとはいかないが、発進性能に不足はない。
さらにアクセルを踏み込むと2速、3速と変速していく。AMTのようにギアを切り替える間(ま)がなく、変速ショックをほとんど感じず加速できるはプラネタリーギアを採用するATの最大メリットでもある。
試乗コースの一番急な上り坂でアクセルをベタ踏みしてみると、エンジンの唸り声は相応に大きくなる印象だが、変速時の失速がないため力強く加速し上り切ることができた。
次に下り坂の途中で停車し、微速後退を試してみた。
下り坂でRレンジに入れると、クリープトルクによってブレーキから足を離しても停止をキープ。目算で5〜6%ほどの今回の坂道程度ならばペダルの踏み変えは楽チンだ。
アクセルペダルを軽く踏み込むと車体が後退し始め、さらに緩急つけてアクセル操作を行なってみると車体の挙動がダイレクトに反映される。アクセルワークだけで、なおかつ坂道で、微妙な速度コントロールが実現できるのは純粋にスゴイとしか言えない。
実際こうした低速走行はミキサ車の荷降ろし現場でも行なわれる動作で、コンクリート打設の現場では、ゆっくり後退または前進させながらキャビンのレバーを操作して生コンを出す荷降ろし作業があったりする。
もちろん熟練ドライバーであればMT車でも行なえる作業だが、ATであれば微妙なクラッチワークが不要となり、こうした運転操作が簡単に実現できるようになる。トラックドライバー不足などを背景に、アリソンATを搭載したGKミキサの需要が高まっているというのも納得がいく。
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