EVというと「寒冷地では性能が低下し、まともに使えないのでは?」というネガティブな見方をする向きもあるが、果してどうなのか?
三菱ふそうが北極圏付近の極寒の寒冷地で実際の運用に供されている新型eキャンターのニュースをリリースした。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/ダイムラートラック
フィンランドでの「eキャンター」の運用
三菱ふそうトラック・バスは、大手国際物流業者の DB シェンカー(本社:ドイツ・エッセン)が、2024年1月にフィンランドで車両総重量(GVW) 7.5トンの電気小型トラック「eキャンター」新型モデル2台を導入したことを発表した。
DBシェンカーが導入した2台のうち1台は、積雪が多く気温がマイナス30℃にも下がる北東部の都市クーサモで、ラストワンマイルの配送向けで運用されている。この車両は、現在「eキャンター」が活用されている地域の中でも最北に位置する。
同社が導入したもう1台は、クーサモから南西約200kmに位置するオウルで稼働中だ。
DBシェンカーは、これまでヨーロッパ全土で50台の従来モデルの「eキャンター」を導入している。同社は新型「eキャンター」2台を新たに導入するにあたり、寒冷地での電気トラックの使用における先入観の払拭も視野に入れ、新型モデルの導入を決定した。
DBシェンカーのクーサモの物流拠点で「eキャンター」を運転する同社のドライバーは、この数週間で1200km以上を走行し、「eキャンター」の優れた性能を実証している。極めて低い気温の寒冷地でも、車両は問題なくスムーズに運行しているという。
フィンランドでの「eキャンター」の運用において、車両の稼働開始前にバッテリーを適切な温度にするバッテリープレコンディショニングが重要な機能となる。
新型「eキャンター」で新たに搭載したバッテリープレコンディショニング機能は、車両の走行開始前に、「eキャンター」のバッテリーを予熱するもので、これにより、低い気温の寒冷地でも車両の走行性能を向上させることができる。
ドライバーも「寒冷地での運用に問題なし」
DBシェンカーのドライバーであるサミ・マアッタ氏は、「『eキャンター』のバッテリーがゼロになって立ち往生したことはこれまでありません。自分が担当する走行ルートも他の車両のルートも、『eキャンター』が寒冷地でも問題なく走行できる性能に合わせて計画しています」と話している。
寒冷時と異なり、暖かい季節では車両の走行計画はより容易になる。DBシェンカーは、年間を通じて「eキャンター」の運用において新しい経験を積むべく、日々の稼働を行なっている。
DBシェンカーのフィンランドにおける輸送責任者であるヘラルド・キナピネン氏は、「eキャンター」の運用は同社の戦略の一部として位置付けている。
「私たちはお客様とともに、フィンランドにおける持続可能な物流の先駆的役割を果たしたいと考えています。CO₂排出量を削減するためにも、電気トラックを活用した輸送への投資は不可欠です。
フィンランドでは、小口輸送が輸送の大きな割合を占めており、新型『eキャンター』は、この用途に理想的な車両です。また、極端な気象条件のフィンランド北部で2台の車両を配備することは、私たちにとってまたとない機会であり、究極の実証試験です」。
ちなみにDB シェンカーは、ヨーロッパで初めて「eキャンター」を導入した顧客の1社であり、2018年に従来モデルをベルリンへ納車して以降、ドイツ、フランス、その他のヨーロッパ諸国で導入をしている。現在、欧州では従来モデルを含む52台の「eキャンター」が DBシェンカーの下で稼働をしている。
【画像ギャラリー】DBシェンカーが極寒の地で運用を開始した新型eキャンター(7枚)画像ギャラリー
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