■メルセデス商用車の歴史 世界初のトラックは1896年に誕生!
1886年1月29日、カール・ベンツが完成させた原動機付3輪車に、「世界で最初の自動車」としてドイツ政府の特許が認められ、同年、ゴットリープ・ダイムラーの開発したエンジン馬車も実走行を開始した。
ベンツは、1895年には史上初のエンジン駆動式バスを製作。そして、自動車の発明から10年目となる1896年にはダイムラーのダイムラー・モトーレン・ゲゼルシャフト(DMG)は世界初のトラックを発表した。
ドイツ南西部マンハイムのベンツとシュツットガルト近郊のカンシュタットを拠点とするダイムラーは、ともに自動車のパイオニアであると同時に、タフなライバルとして刺激しあっていた。
商用車の部門においても最初のデリバリーバンやフォワードコントロール(キャブオーバー)車など斬新なアイデアを次々と具現化していく。
■ディーゼルエンジンをはじめトラックの技術革新を推進
そして合併の3年前となる1923年には、それぞれが別個にディーゼルエンジン搭載トラックを開発。その後のトラックの技術革新を大きく推し進めることとなった。
ベンツが同年テスト走行を行なった5トントラックは、8・8Lの排気量から45~50馬力を発生する予燃焼室式4気筒のOB2型エンジンを搭載したもの。
いっぽう燃料を圧搾空気によって噴射する方式のディーゼルエンジン(定置用)の開発を第一次大戦前から進めていたダイムラーは、同時期に4気筒40馬力のユニットをトラックに初搭載して試走を行なった。初期のディーゼル機関は車両用ではなかったのである。
■ライバルが手を携えダイムラー・ベンツが誕生
翌1924年、それまで熾烈なライバル関係にあったベンツ&Cie社とダイムラー・モトーレン・ゲゼルシャフト社は資本提携関係を結び、メルセデスとベンツブランドの販売に於ける連携などを実施。続いて’26年に両者は合併してダイムラー・ベンツAGが発足した。
なお前後するが、メルセデスの名称は1900年当時自動車レースに出場していたフランスの富豪、エミール・イェリネックがダイムラー社のヴェルヘルム・マイバッハに製作を依頼した高性能レーシングカーに娘の名前を冠した「メルセデス35PS」がその始まり。
やがてメルセデスは正式なダイムラー全体のブランド名となり、ベンツとの合併によりメルセデス・ベンツが誕生することになった。
■合併の翌年に発表されたトラック・ラインナップ
合併の翌年に発表されたダイムラー・ベンツの最初のトラック・ラインナップは、3つのモデルシリーズで構成されていた。
ペイロード(架装物や乗員の重量を含めた最大積載量)は1.5~5.0tをカバー。最もヘビーデューティなL5(GVW約10t)には、車両用としては世界初の6気筒ディーゼルエンジンOM5型が搭載されて、大いに注目を集めた。
現在もディーゼルユニットの型式名に使われている「OM」は、オイル・モーターの略称で、ディーゼルエンジンを指すものだ。
その後、世界恐慌直後の32年には新シリーズを発表。その口火を切ったLo2000型は、GVW5t級・ペイロード2tの小型トラックで、55馬力を発揮するOM59型4気筒3.8リッターディーゼルエンジンを搭載していた。
当時このクラスにおいてガソリンエンジンを凌駕する高性能ディーゼルは画期的であり、ダイムラー・ベンツはディーゼルエンジンのトップメーカーとしての地位を確固たるものとしていった。また、この時期には世界初のセミトレーラも発表している。
トラックでも「世界No1」の称号を誇るダイムラー・トラックの歴史はこうして形づくられていったのである。