今も残るコンドルの血統!! UDトラックスの海外向けモデル「クーザー」とは何者か?【世界を走る日本のトラック】

輸出国は右ハンドル国に集中

 インドネシアに続いて、南アフリカ共和国とマレーシアでも「クーザー」を導入しています。

 マレーシア向けはインドネシアとほぼ同仕様ですが、南ア向けはGVW8.9t・ホイールベース3850mm・Euro-2適合・ABS装着車のみと、仕様が少し変わっています。

 ちなみに、インドネシアでのUD車ラインナップは「クーザー」と大型の「クエスター」の2モデル、マレーシアでは「クーザー」「クエスター」と中型の「クローナー」の3モデルを展開しています。

 南アでは「クーザー」「クローナー」「クエスター」に加えて、「クオン」も展開しており、UD本家よりラインナップがひとモデル多い4モデルを設定するという、世界で唯一の市場となっています。

 「クーザー」の輸出国は、量販が期待できるはずの小トラにしては少なく、事実上右ハンドル国に集中しており、「クエスター」「クローナー」ほど販路は拡がっていません。やはり、大中型トラック中心のメーカーゆえなのでしょう。

インドのアイシャーの姉妹車とは?

 実は「クーザー」には、双子の姉妹がいます。

 そのもう一方の姉妹とは、インド第3位のトラックメーカー・アイシャーの「プロ3008」という小型トラックモデルで、「クーザー」と同じく本国では展開しない輸出専用車でもあります。そしてデビュー時期も同じでした。

 「クーザー」に対して、「プロ3008」はフロントグリルの形状やエンブレム類などのデザインが異なりますが、キャブは先々代コンドルベースで同じ。GVW8.5tシャシーは、わずかな寸法の違いはあるものの(ホイールサイズが異なるためとみられる)、ホイールベースやシャシーフレームのサイドレール断面寸法も同一です。

 エンジン型式は「E494」で、排気量表記は3.77Lで10cc違いますが、シリンダのボア・ストローク値は「GH4E」の100mm×120mmと一致しており、最高出力149hp・最大トルク490Nmもほとんど同じです。

 このように共通点の多い両車ですが、それもそのはず、「クーザー」も「プロ3008」も、UDトラックスがデザインを担当し、車両の開発と生産はインドの「VEコマーシャルビークルズ」(VECV)という、ボルボグループとアイシャーの合弁企業が行なっているのです。

 エンジンもやはりVECV製で、2014年にGVW10~15t車として登場した新中型トラック「プロ3000シリーズ」とともにデビューしており、ボルボグループのエンジンマネジメントシステムが搭載されたものです。

 そして、名称から察せられるように「プロ3008」は、この「プロ3000シリーズ」の車型バリエーションの一つで、そのロワーエンドに相当するモデルなのです。

ボルボグループの協業で生まれた小型トラック

 こうしてみると、「クーザー」は「UDブランドのプロ3008」だなと思えるところですが、この話はそう単純ではありません。

 現在はいすゞグループとなっているUDトラックスですが、ボルボグループだった当時は、グループ各社間でノウハウや技術資産の共有を進めていました。

 その一環として、提携先を三菱自動車工業からボルボグループへと変えたアイシャーのラインナップ刷新に、UDトラックスも少なからず関与していたのです。UDトラックスが担当したのは、アイシャー車の新しいデザイン開発(上尾のデザイン部門で行なわれた)と、前述のキャブを中心とするコンポーネント技術の供与です。

 UD由来のキャブは、「プロ3000シリーズ」と「プロ6000シリーズ」で導入されており、さらにアイシャーの新たなフラッグシップモデル「プロ8000シリーズ」は、新興国向け大型トラック「クエスター」のフロントデザインを変えたものとなっています。

 このように「クーザー」は、VECVが開発・生産に関与している部分が拡大しているものの、「クエスター」や「クローナー」と同様、ボルボのグループ分業戦略で生まれたトラックだといえるのです。

次ページは : いすゞグループ入りでどうなる?「クーザー」の今後

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