2011年の車体・特装車メーカーの電動モデル
国内トラック車体メーカー/特装車メーカーの業界団体・日本自動車車体工業会の屋外ブースでは、架装物の電動化の試みや、シャシーの電動化に対応した架装物の試みが展示されました。これらは世界的にみても、かなり先進的な取り組みだったのです。
【極東開発】eパッカー プレスパック
ごみ収集車の塵芥回収装置を電動化。三菱MiEVの高電圧バッテリーユニットで回収装置を駆動することで、ベースシャシーのエンジンを停止させての収集作業を可能とした。出品車は圧縮式回収装置のプレスパックだが、回転板式のパックマンも電動化できた。なお、いずれもショー時点ですでに市販されていた。ちなみに出品車のシャシーはハイブリッド車だったが、シャシー搭載の高電圧バッテリーを共用するシステムへと進化するのはこの後の話。
【新明和】G-RX E3(イーキューブ)
ごみ収集車の塵芥回収装置を電動化。こちらはエンジンに専用発電機を組み付け、走行中に回生した電力を用いて回収装置を駆動する方式である。電力ストレージには高電圧バッテリーではなく、蓄電装置(電気二重層キャパシタ)を用いていたのも特徴だった。このユニークなE3は、ショーモデルではなくれっきとした市販モデルであり、回転板式ルートパッカーG-RX、圧縮式タウンパックG-PXともにE3を設定していた。
【富士重工〈現・SUBARU〉】フジマイティ―エレクトラ
ごみ収集車の塵芥回収装置を電動化。ベースのメカニズムは通常のごみ収集車と共通で、エンジンで作動させた油圧装置により回収装置を動かすが、専用バッテリーによる電気モーター出力でも動かせるというシステムになっていた。富士重は翌2012年末をもって環境車両事業から撤退し、協業相手だった新明和へ同事業を譲渡することになるが、このフジマイティ―エレクトラの電動システムも新明和に受け継がれ、前述のE3とともに製造・販売が続けられた。
【タダノ】スライドキャリア・エスライド ハイブリッド
1台積み車載運搬車の荷台スライドを電動化。これもエンジンで作動させた油圧装置によって荷台スライド装置を動かす通常のシステムに加えて、専用バッテリー(走行中に充電)の電力によるモーター出力でも油圧装置を作動できるシステムを搭載した。現行モデルは改良型のエスライドEXとなっているが、ハイブリッド仕様は現在も展開している。
【極東開発】ツインドライブ フラトップZero
1台積み車載運搬車の荷台スライドを外部電源化。これもエンジンで作動させた油圧装置によって荷台スライド装置を動かす通常のシステムとともに、電動によるスライド動作も可能としているが、その電力はもっぱら外部電源からの供給とし、専用バッテリーは搭載しないのが特徴。立体駐車場や地下駐車場などでの積載作業で、排気ガスと騒音を発生させないことを狙っていた。
【日産車体】アトラスF24リチウムイオンバッテリー式冷凍車
屋内・日産車体ブースで参考出品された電動冷凍システム搭載車。通常の冷凍ユニットは、エンジンと直結したコンプレッサで冷媒を圧縮するが、これを専用バッテリーで駆動する電動コンプレッサに置き換えたもので、エンジン停止時でも庫内温度を維持できた。専用バッテリーには日産リーフ(初代)と同じ高電圧リチウムイオン電池を採用し、断熱バンボディの前方フロアに新設した雛壇の床下に収めていた。
2年後に日産自動車がメーカー完成特装車として商品化したものの、高価ゆえに普及には及ばず。しかし菱重コールドチェーン/三菱重工サーマルシステムズが開発した電動冷凍ユニットは、その後も改良を重ねていき、日本のみならず欧州など海外へも供給されている。
……このように、いまから14年前の東京モーターショーでは、今に続くもの続かなかったものさまざまな商用車と技術が、めくるめく出品されていたのでした。
【画像ギャラリー】東京モーターショー2011に出品された先進の商用車たち(19枚)画像ギャラリー
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