国産トラックメーカー唯一のヨーロッパ生産拠点! 三菱ふそうトラマガル工場が歩んだ波乱の60年をたどる

国産トラックメーカー唯一のヨーロッパ生産拠点! 三菱ふそうトラマガル工場が歩んだ波乱の60年をたどる

 三菱ふそうトラック・バスが国産トラックメーカーで唯一、EU(欧州連合)内で操業している生産拠点・トラマガル工場が、このほど設立60周年を迎えました。ユーラシア大陸最西端の国・ポルトガルにある同工場では、欧州市場向けの小型トラック「キャンター」「eキャンター」を生産していますが、そこに至るまでの道のりは波乱に彩られたものでした。プレスリリースにはないエピソードを交えてお伝えしましょう。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/三菱ふそうトラック・バス、Daimler Trucks、フルロード編集部

異例の歴史をもつトラマガル工場

三菱ふそうトラックヨーロッパ(MFTE)トラマガル工場。カーブを描いているのは国鉄ベイラ・バイシャ線の鉄路。右端の町がトラマガルの中心部、テージョ川の向こうの山あいに地域最大の都市・アブランテス市を望む
三菱ふそうトラックヨーロッパ(MFTE)トラマガル工場。カーブを描いているのは国鉄ベイラ・バイシャ線の鉄路。右端の町がトラマガルの中心部、テージョ川の向こうの山あいに地域最大の都市・アブランテス市を望む

 三菱ふそうトラマガル工場は、正確には同社の完全子会社・三菱ふそうトラックヨーロッパ(MFTE)の生産拠点で、1996年に当時の三菱自動車工業が設立した会社ですが、そもそもは現地企業が1964年に設立した軍用トラック生産工場という、異例の経歴をもっています。

 三菱自工/三菱ふそう時代で数えれば設立28周年なのですが、工場創設の年から数えた「設立60周年」としているのは、ご当地の歴史と密接な関わりがあるためでしょう。その歩みは波乱に満ちていました。

ポルトガル現代史との関係

 「トラマガル」とは、ポルトガルの首都リスボンから北東へ約150kmの位置にある、人口3000人に満たない小さな町の名前です。

 町固有の産業はブドウ生産ですが、1856年生まれの鍛冶職人エドゥアルド・ドゥアルテ・フェレイラ氏が1880年に興した工房は、1920年代には同国最大の鉄鋼工場として地方経済を支えるまでに至り、トラマガルはMDF(ドゥアルテ・フェレイラ金属工業)の城下町となりました。

 いっぽう第2次世界大戦後のポルトガルは、アジアやアフリカに領有する植民地の独立闘争に直面します。当時の同国経済は、植民地に依存するところが大きく、国軍を派兵して鎮圧を試みますが、軍事行動にトラックは必需品で、しかも不足していました。自動車産業がない当時のポルトガルは、高価なトラックを輸入するしかなかったからです。

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