生まれ変わった12.8リッターエンジン
さて、新型スーパーグレートのエンジン・6R30型は、ふそうの親会社・ダイムラートラックでは「第3世代OM471型」と呼ばれ、2022年秋に発表された。メルセデス・ベンツブランドの「アクトロス」やフレイトライナーブランドの「カスケディア」といった欧米向け大型トラックも搭載するエンジンである。生産拠点は、かのカール・ベンツが自動車製造業を興したマンハイム工場だ。
実は、2010~17年にわたって発売された、スーパーグレート平成21年排出ガス規制(ポスト新長期規制)適合モデルで搭載していたエンジンが、第1および第2世代のOM471型だった。17年以降の平成28年排出ガス規制(ポスト・ポスト新長期規制)適合モデルでは、前述の6R20型(OM470型)と7.7リッターの6S10型(OM936型)へとダウンサイジングし、幅広い車型展開と積載性を両立していた経緯がある。
その流れで、12.8リッターの「復活」は意外なのだが、前述のとおり日本の走行環境を意識したJH25モードでは、エンジン重量増でも「大排気量化」のメリットが大きく、採用することになった。
第3世代OM471型=6R30型は、内径132mm×行程156mmの直列6気筒エンジンで、吸気2・排気2の各バルブ駆動にDOHCを採用、燃料噴射に最大噴射圧250メガパスカル(2500気圧)の増圧式コモンレールシステム、またクールドEGRを用いる点は、第1・2世代と同じだが、圧縮比を20.3へとアップ(従来は18.3)、直噴燃焼室の形状やインジェクタのノズル噴口デザインを改めるなど燃焼設計を一新し、燃焼効率を大幅に高めたのが特徴である。
併せてダイムラー自社開発のターボチャージャーも、コンプレッサ、排気タービンともに設計を最適化し、過給圧が高められた。その上で、394PS~475PS仕様は燃費重視ターボとし、タービン軸受けにボールベアリングを用いて駆動摩擦を低減、燃費を最大4%改善させた。トップレンジの530PS仕様は、強力な動力性能とエンジンブレーキ(圧縮解放リターダ)のトルクに対応するタイプとしながら、最大3.5%の燃費改善も実現している。
また、オイルポンプには電動圧力制御弁を新設、エンジンオイルの油圧上昇を最適化することで、オイルポンプの駆動ロスを低減した。エンジンオイル自体も低粘度タイプを採用し、ピストン摺動抵抗を低減している。
さらに燃焼設計の一新に伴って、排ガス後処理装置(尿素SCR+DPF)とその制御を刷新、NOx浄化率の向上とともに、浄化性能をより長期にわたって維持できるようにするなど、同じ12.8リッターエンジンでも、その中身はほとんど生まれ変わったといえる。
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