トラックのキャビンは、運転だけではなく、休憩や食事も行なう大事なスペース。業務を安全に遂行するためにも、室内の居住性は重要だ。
国産大型トラックのキャブ前後長は、フルキャブで2.0m級、ショートキャブで1.7m級が基本。これは保安基準の上限である全長12mの長尺カーゴ車で9.6m級、ショートキャブ車で10.0m超の荷台内法長を確保するためだ。
全長規制が日本より緩やかな欧州車の場合、2.0m級のキャブに独立したベッドスペースは備わらないが、国産車はさまざまな工夫により大人がゆったり眠れるサイズのベッドを装備。加えて衣服などを仕舞う収納スペースも備える。
欧州車よりひと回り小さい国産大型トラックのキャブは、いかにして限られた空間で居住性を確保しているのか? 日本の大型トラックの運転席のヒミツに迫った!!
文/多賀まりお、トラックマガジン「フルロード」編集部
※2021年3月13日発売「フルロード」第40号
大容量収納と開放感が自慢の
日野プロフィアの運転席
日野自動車の大型トラック「日野プロフィア」は2017年4月のフルモデルチェンジでキャブを一新。ドアやフロントウィンドウは継続使用するが、キャブ骨格はサイドメンバーとドア開口部周り、ルーフパネル以外が新設計となっている。
キャブ搭載位置に対して前軸の中心位置を30mm後方に移動するとともに、ドライビングポジションを見直し、インパネやステアリングポスト、ペダル周りは18mm前進。フロアトンネルも若干幅が広げられた。
ハイルーフは内寸高を従来の1900mmから2030mmに拡大。あわせてパーキングブレーキレバーをインパネに移設して、センターコンソールをなくした。これによりフロア中央を立ち上がれるスペースとし、開放感を演出している。なお、フロアコンソールは販売店オプションで用意している。
ハイルーフ部の前方と側方には扉付きの棚を含む大容量の収納スペースを用意。AMTはインパネ上のダイヤルとステアリングコラム左側の専用レバーで操作する仕組みだ。
運転席には減衰力調整機能付きのエアサスシートを採用。また、ショルダー部にシートベルトのリトラクタを内蔵した高機能シートを主力車型に標準装備した。
2種類の高さと4種類の内装をもつ
三菱ふそうスーパーグレートの運転席
三菱ふそうトラック・バスの大型トラック「スーパーグレート」は、平成28年排ガス規制対応を機に全面変更を実施。17年の5月に発表された。
新型のポイントは、制御系を含む車体全般でダイムラーグループ内の共用化が進んだことで、19年10月発売の19年モデルには、同グループが開発した運転自動化レベル2の運転支援技術が各種先進安全技術とともに搭載されている。
新型スーパーグレートのキャブは、従来型の骨格を踏襲しながら内外装を一新。フルキャブはフロア高が2種類用意され、ラジエターサイズがひと回り大きい10.7Lエンジンの高トルク仕様にはフロア面が標準より120mm高いスーパーキャブを組み合わせる。
室内はインパネのデザインが新しくなり、メータークラスター、レバー、スイッチ類をメルセデス・ベンツ大型車と共用化。ステアリングコラム左側にAMTと補助ブレーキの操作を1本で行なうレバーを配置し、ワイパースイッチは右側の方向指示器レバーと兼用になった。
エコライン、プロライン、プレミアムライン、およびプレミアムラインのエグゼクティブパッケージと、4グレードを設定するのも国産大型トラックでは唯一となっている。
大容量収納と快適装備が満載の
いすゞギガの運転席
2015年10月に21年ぶりのフルモデルチェンジを行なったいすゞ自動車の大型トラック「ギガ」は、キャブの骨格を2.3m幅の中型車ワイド用と共用化。キャブ前面の走行風の高い圧力を受ける面積が小さくなったことで、空気抵抗係数(Cd値)が3.1%低減した。
エンジンコンパートメントスペースの確保のため、フロア高は従来型キャブの最終仕様よりも70mm高められ、プロフィア、スーパーグレートの高キャブと同等の高さに。単車系には7.7Lのエンジンも設定されたが、フロア高が低い仕様は存在しない。
現在のモデルは、平成28年排出ガス規制対応を経て19年12月にマイナーチェンジを行ない、先進安全装備と快適装備を充実。さらに20年2月に運転自動化レベル2相当の高度運転支援機能(レーンキープアシスト)をカーゴの主力車型に新規オプションとして追加した。
これに伴い、大型ハイルーフをはじめ、イスリングハウゼン社製ベンチレーション/ヒーター付き高機能エアサスシート、電気式の温冷蔵庫などが主力車型に標準装備された。
ハイルーフはフレーム上面の最も高い車型では全高3.8mに迫るフルサイズ。リッド付きの大容量収納スペースが室内前方に備わるほか、ドア上部やベッドサイドにポケットを追加した結果、室内の収納力は大幅に向上している。
使い勝手と室内高が自慢の
UDトラックス クオンの運転席
UDトラックスは2017年4月に大型トラック「クオン」のモデルチェンジを発表。新型はボルボグループのコンポーネントを積極的に採用しているのが特徴だ。エンジンは当初10.8Lのみの設定だったが、19年1月に7.7Lエンジン搭載車を追加。さらに20年6月にはショートキャブが復活した。
キャブはフロント周りの外装とともにインパネ周りを一新。特徴的なラウンドタイプの造形を維持しながら、ブラック/シルバーの精悍な意匠に変更された。センターコンソール部は従来型を継続使用する。
メータークラスター中央にはメイン/サブの液晶表示が置かれ、表示の切り替えとクルーズコントロールの操作はステアリングスイッチで行なう。
AMTのシフトレバーはボルボと共用化された。操作は独自のHパターンから一般的なストレート型に改められ、Dレンジで自動変速、Mで手動となる。手動の増減段はレバー右側のプラス/マイナスボタンで操作する仕組みだ。
シートやベッドスペース、収納などは従来型と変わらず。天井は標準型が約100mmのセミハイルーフ仕様とされ、さらに室内高が380mm高いハイルーフも設定。室内高は1890mmに及ぶ。跳ね上げ機構付きの助手席など、使い勝手の良さが印象的な室内だ。
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