フィンランドの老舗トラックメーカー、シス・オート製の車両をベースに、充電も可能な燃料電池EV(いわば「プラグイン・ハイブリッドFCEV」)とした大型トラクタが登場した。
もちろん市販車ではなく研究用の車両だが、氷点下50度にもなる同国の厳冬期に、セミトレーラをダブルで連結する総重量68トンという厳しすぎる条件で試験を行なうという。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Oy Sisu Auto Ab・ESCALATE
フィンランドに「プラグインFCEVトラック」が登場?
北欧のフィンランドで、水素と電気の両方を使った大型トラックによる長距離輸送の可能性を探るプロジェクトが開始される。主導しているのはフィンランドのVTT技術研究センターで、水素と電気のハイブリッドトラックにユニークな方法で取り組んでいる。
欧州連合(EU)が資金提供する「エスカレート」コンソーシアムは複数のプロジェクトを展開しているが、フィンランドでは同国の老舗自動車メーカー、シス・オート製トラックをベースとするアプローチを行なっている(以下、車名についてシス・エスカレートと呼ぶ)。
シス・エスカレートは普段は充電可能なバッテリーで走り、長距離輸送など追加のパワーソースが必要な時は水素燃料電池が急速充電機能を提供する。いわばバッテリーEV(BEV)と燃料電池EV(FCEV)を合体させた「プラグイン・ハイブリッドFCEV」トラックである。
研究用のプロジェクトで市販車ではないが、2026年の年末ごろから通常の輸送業務における本格稼働を開始する予定で、「デジタルツイン」技術などを活用して車両の走行状況を継続的に監視・計測することにしている。
VTTのリサーチプロフェッサー、ミッコ・ピフラティエ氏は次のように話している。
「私たちは様々なソリューションについて、エネルギー消費量や全体の機能性、信頼性に関するデータを収集しています。今回の車両は1日当たり540kmを走行し、その間に消費する電力と水素を調査します」。
シス・エスカレートには複数のフィンランド企業が参加しており、ベルギーのブリュッセルで開催された水素関係の展示会「EU水素ウィーク」でも注目を集めた。
欧州のバッテリーメーカー IONCOR や、トラック用のメガワット充電システム(MCS)を開発している Kempower はいずれもフィンランドを本拠としており、プロジェクトのメンバー。車両の充電ソリューションと電動パワートレーンの統合を担当するのはHevtec社で、まさにオールフィンランドの取り組みとなっている。
首都ヘルシンキ市での配送のほか、長距離ルートとしてフィンランド南部のヴオサーリ港と中部のユヴァスキュラ市の間でも運行される。なお、純電動バージョンは2026年春に試験されたそうだ。
ピフラティエ氏は「トラックを6か月間監視することでパフォーマンスと、天候などエネルギー消費に影響する要因、実運行時の制約条件などに関するデータを集め、充電ネットワークの開発とエネルギー消費の最適化に役立てます」としている。
総重量68トンのHCTで試験
ユヴァスキュラにはフィンランド初となる水素ステーションが建設され、シス・エスカレートはこれを利用する。また長距離ルートの両端に充電ステーションが設置されており、ルート沿いではMCSに対応する充電ステーションも建設される予定だ。
ハイブリッド車のコスト/パフォーマンスは運行条件により大きく左右されるため、その経済性を評価するにはこうしたデータが重要となる。
水素価格・電気料金を加味した上で、パイロットプロジェクトを通じて得られる実燃費(電費)データは、ディーゼル車との比較によるコストメリットを評価するために不可欠だ。また車両の構成においてはエネルギーをどこに、どれだけ蓄えるべきかという最適化戦略を推定するためにも必要となる。
運行される6か月は厳冬期を含む半年となるが、フィンランドといえば冬の厳し寒さで知られている。この環境でのバッテリー・燃料電池の評価もプロジェクトの目的の内だ。
また、長大トレーラの運行が許可されていることでも有名で、セミトレーラを2台繋げたAダブル(連結全長は最大34.5メートルに達する)など「HCT」(ハイ・キャパシティ・トランスポート)構成が可能な国である。シス・エスカレートもこうした構成で運行される予定だ。
欧州の連結総重量の制限値は一般的には40トンだが、フィンランドでは最大76トンが認められている。ただし、今回のプロジェクトでは68トンに制限される。搭載するバッテリーは650kWhで、最大出力120kWの燃料電池を備える。燃料電池システムはバラード製で、タンクは700bar圧力の気体水素を最大58kg貯蔵する。
なお、水素タンクとバッテリーの両方を搭載するため、通常のトラクタよりシャーシは長くなっている。



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