大型BEVトラックの超大容量バッテリーに追突したらどうなる? メルセデス・ベンツが実車による衝突実験!

大型BEVトラックの超大容量バッテリーに追突したらどうなる? メルセデス・ベンツが実車による衝突実験!

 モバイルバッテリーの発火や爆発事故が度々ニュースになるが、容量にしてその数万倍のバッテリーを搭載する大型BEVトラックが事故を起こしたらどうなってしまうのか?

 ダイムラー・トラックはメルセデス・ベンツ・トラックスの「eアクトロス600」実車を使って、側面衝突実験を行なった。ドライバーのみならず、周囲やレスキュー隊員にも深刻な被害を与えかねない、大型車の高電圧バッテリーの衝突安全性とは?

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Daimler Truck AG

MBが大型BEVトラックのクラッシュテストを実施

大型BEVトラックの超大容量バッテリーに追突したらどうなる? メルセデス・ベンツが実車による衝突実験!
メルセデス・ベンツ・トラックスは大型BEVトラックのバッテリーへの影響を調べるため、「eアクトロス600」による側面衝突実験を行なった

 ダイムラー傘下、メルセデス・ベンツ・トラックスの「eアクトロス600」は長距離輸送用のバッテリーEV(BEV)大型トラックであり、同社の電動フラッグシップトラックである。

 同車は効率性と持続可能性とともに、最高水準のアクティブ/パッシブセーフティを実現しているという。

 この安全性は、実際に起きた事故のデータを社内の事故研究チームが分析・評価し、車両設計に反映したことによるそうで、典型的な大型トラックの事故シナリオに合わせて、同社は一貫して安全対策の強化を続けている。

 およそ1年前に量産を開始したeアクトロス600だが、このたび、ドイツのノイミュンスター市で行なわれた衝突実験の一つとして、eアクトロス600への側面衝突が試験された。

 大型BEVトラックのバッテリーは、ホイールベースに搭載することが多く、側面衝突はバッテリーに強い衝撃を与える。バッテリーへの衝撃は発火や爆発などに繋がることがあり、大型トラック用のバッテリーともなれば深刻な事態にも発展しかねない。

 試験の結果、かなりの衝撃が加わったにも関わらず、eアクトロス600の高電圧バッテリーシステム全体と電気部品は健全性を維持していたといい、同社でパッシブセーフティ開発を担当するフェリックス・ピートラー氏は次のように話している。

「車両の安全性に関しては、当初から一切妥協しないことを目指してきました。特に、電気で駆動する車両の場合、乗員の安全を確保するだけでなく、周囲の安全対策も不可欠となります」。

包括的な衝突コンセプトと試験の舞台裏

大型BEVトラックの超大容量バッテリーに追突したらどうなる? メルセデス・ベンツが実車による衝突実験!
側面衝突でも同社の衝突コンセプトが機能しており、バッテリー・高電圧システムの健全性は維持されていたという

 eアクトロス600の強化されたキャブと、車両前方に配置する衝撃吸収ゾーンは衝突最適化構造となっており、正面衝突時の衝撃を的確に分散する。いっぽう、バッテリーへの影響が懸念される側面衝突に関しても衝突コンセプトが機能しており、今回の試験によりバッテリーモジュールへの影響がないことが確認された。

 これは、大型車の衝突に備えて特別に開発されたフレーム構造により、バッテリーハウジングに大きな変形を起こさなかったためだという。同社の事故研究とパッシブセーフティ部門の責任者であるフランク・ミュラー氏は「非常に強い機械的ストレスがかかる側面衝突でも、当社のコンセプトは確実に機能しています」と話している。

 こうした実車を使った衝突試験は一度きりとなるため、衝突に先立ってシミュレーションベースの分析を実行し、センサー類を設置した。センサーには正確なキャリブレーションを実施し、すべてのコンポーネントをテストシナリオに合わせて調整した。

 パッシブセーフティチームのクリストフ・ベルガー氏は「個人的には衝突の2~3分前が印象に残っています。全てが静かになり、緊張感が満ちていました」と語っている。そしてテストシーケンスが作動し、1トンを超える重量をトラックの側面に時速50kmを超える速度で衝突させた。

 バッテリーを含む高電圧(HV)システムに関して同社は、絶縁、機械的保護、防火など厳格な内部要件を設定しているといい、深刻な損傷が発生した場合の潜在的リスクを低減している。安全性に関しては法定要件を大幅に超える、「メルセデス・ベンツ」ブランド固有の基準があるそうだ。

 試験後、専門機関によるチェックが行なわれ、その後、ダメージの分析のため主要コンポーネントを分解してチェックした。その結果についてミュラー氏は次のように要約している。「結果は私たちの予想を裏付けるものです。実際の現場においても危険はなかったと考えています」。

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