2025年1月下旬、電気小型トラック「eキャンター」を使ったトーヨータイヤのスタッドレスタイヤの雪上試乗会が北海道で開催された。
試乗では、トーヨータイヤが2024年に発売したEV専用スタッドレスタイヤ「ナノエナジーM951EV」と、バランス型スタッドレスタイヤ「M919」を比較。 非対称パターンというコンセプトで開発されたEV専用スタッドレスの実力を試した。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
※2025年3月発売「フルロード」VOL56より
トーヨータイヤのEV専用スタッドレス
トーヨータイヤは、2024年9月に小型EVトラック専用スタッドレスタイヤ「ナノエナジーM951EV」(215/70R17.5の1サイズ)を発売。同年6月に発売した小型EVトラック専用リブタイヤ「ナノエナジーM151EV」の非対称パターンのコンセプトをスタッドレスタイヤにも展開させた。
このコンセプトは、縦溝のリブ基調とブロック基調を組み合わせたトレッドパターンを採用することで、車重が重く低速から高トルクが発生するEVトラックの特性に対応しようというもの。

高速道路を主体とする長距離輸送やバス向けのタイヤなどに採用されている縦溝のリブ形状は、剛性が高く低燃費性能や耐摩耗性能に優れ、オールシーズンタイヤやスタッドレスタイヤなどに見られるブロック形状で、ブロックの角が路面を引っ掻くエッジ効果(スタッドレスの「サイプ」でも同様の効果を発揮)によりトラクション性能やグリップ性能に優れる特徴を持つ。
M951EVは、この非対称パターンに加え、高密度サイプ、耐摩耗NPCコンパウンドの技術を採用することで、氷雪上性能を維持しながら、統合性能型スタッドレスタイヤ「M919」比で摩耗ライフを38%、航続距離などに影響する転がり抵抗を15%低減、ウエット加速を4%向上させている。
EV専用スタッドレスを特設コースで比較試乗
今回スタッドレスタイヤの比較試乗は、このM951EVとM919を装着した2台のeキャンターが提供された。両車ともにMサイズバッテリーを搭載するGVW7.5tクラスの車両(ワイドキャブ)で、モーターの最高出力/最大トルクは175PS/430Nmの高馬力タイプである。
なお、M951EVはパブコ製のドライバン、M919は日本フルハーフ製のウイング仕様で、ウエイトは両車半積状態となっていた。
早速、M951EVを圧雪路の特設コースで走らせてみた。コースは急制動や定常円旋回などが試せるように設営されている。まずは普通にアクセルを踏み、発進を試してみると、しっかり雪を掴んで加速。
耐摩耗性能と二律背反する氷雪上性能であるが、剛性が柔らかめであるM919と比較してもM951EVのトラクション性能は遜色ない。
また旋回時でも、ロールに対してしっかり保持してくれるようなグリップ力を発揮。このあたりは、フロントタイヤは外側にリブ形状が配置されるためか、旋回時にはステアリングを切った際には素直に曲がってくれるような、ステアリングの追従性が高い印象がある。
また約30km/hほどからフルブレーキをかけて急制動を試しても、両車との差はほぼなく、充分な制動力を発揮してくれた。
いっぽう、もう少し速度を上げるとやや差も見られた。約50km/hほどに速度をあげた急制動では、M951EVの制動距離は若干長くなる傾向があったほか、アクセルを強く踏み込んで(ほぼベタ踏みで)発進・旋回などを試すと、体感ではあるがASRの警告(ESP=車体安定性制御やASR=トラクションコントロールが作動)がメーターディスプレイに表示される頻度がM919比で多く感じた。
とはいえ、M951EVの雪道に求められる氷雪上性能は充分確保されており、EVトラックに最適といえる高い耐摩耗性能、低電費性能を考えれば、北海道のようなスタッドレスタイヤの履き潰しが多い降雪地域、あるいは普段は降雪がなくても突然のドカ雪が降ったりする地域のユーザーでも経済的に安心して乗れるスタッドレスタイヤといえるのではないだろうか。

コメント
コメントの使い方