トヨタ自動車が開発を進めている第3世代燃料電池(FC)システムが、2月19日、都内で初めて公開された。大型商用車で使用できるヘビーデューティーな性能と大幅なコスト低減の両立を目標とし、2027年に予定される小型FCトラックの全面改良、同じく2029年に予定される大型FCトラック用の全面改良と合わせて、順次ユニットの供給を開始する計画だ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/フルロード編集部、トヨタ自動車、日野自動車、PACCAR
商用車に使える耐久性とコストを目指す

トヨタは2月17日に第3世代FCシステム※の開発に関するプレスリリースを発表、その2日後の19日に開催された「H2&FC EXPO」で初公開した。ここでは19日の取材から、この新システムについてレポートする。
初公開での報道説明会では、トヨタ自動車・水素ファクトリーの山形光正プレジデントが壇上に立ち「これまで161台の小型FCトラックを納入してきた。お客様からは商品性の良さを評価していただけたが、水素が軽油より高いこと、FCのメンテナンスの不安、車両価格の高さなどが指摘された」と、実証営業運行におけるFCシステムの課題を明らかにした。
そのうえで、第3世代FCシステムの開発にあたっては、『商用車に使える商品改革』を進めることとし、燃料電池スタックのセルに用いる材質および設計、触媒、その製造プロセスに至るまで「根本的に違う」(山形プレジデント)ものへ改め、大幅な耐久性向上とコスト低減を両立したという。
『商用車に使える……』の目標は、従来(第2世代)比で「耐久性能は2倍、燃費性能は約20%向上、コストは大幅削減」という3点の実現だ。
第1~2世代では乗用車向けのFCシステムを想定していたが、商用車は高出力・長時間運転というヘビーデューティな作動条件下で経済合理性も求められる。そのため商用車で実用に足るFCシステムであれば、乗用車向けや汎用向け(建機、鉄道ほかバスも含まれる)でも優れた競争力が確保できることが、第3世代で基準を商用車スペックとした理由である。
※注:『FCシステム』というのは、大元の燃料電池スタック(水素と酸素を反応させて電気を生む装置)に送電装置、水素供給装置、給気装置などの補機類を組み付けた発電ユニットの状態を指す。呼び方は統一されておらず、FCモジュールなどのほか海外ではFCエンジンとも呼ばれるが、雰囲気的には確かにエンジンと近いところがある。
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