トラックドライバーなら誰しも着指定の時間までに着くよう、事前にルートを調べ、余裕を持って出発し、使命感・責任感をもってハンドルを握っていると思います。
それだけにさまざまな理由で着指定の時間に間に合わなかった「延着」は、誰よりもドライバーが一番悔しいはず。
ま、人間ですから、寝坊して出発時間が遅れたなんてケースもあると思いますが、時ならぬ降雪やら事故やら車両故障など、どんなに不可抗力のケースであっても、遅れを懸命にリカバーしようと努力するトラックドライバーの姿には頭が下がります。
トラックドライバーは、いつも時間との戦い。「延着」は、トラックドライバーにとって不名誉な記録ですが、トラックドライバーが綴るさまざまな「延着」のエピソードにふれると、むしろ、ふだん当たり前のように達成している「定時着」が俄然輝いて見えます。
文/かんちゃん・みゆ・ひろし 写真/フルロード編集部
*2014年3月発行「フルロード」第12号より
■たった一度の「延着」は若気の至り その苦い思い出がいい薬に……/かんちゃん
「延着」は若かりし頃に一度しかないんです。私は友達のお誘いで、とある運送会社に入社しました。当時は面接もいい加減なもので、面接官の第一声は「君、作業服のサイズはLだな」って、面接開始3秒ほどで採用決定!!
最初は郊外のAコープ店舗に青果&鮮魚の配達から始まりました。半年ほどこの路線を走っていたのですが、たまたま建材配達の長距離便に空きが出て乗らせてもらえることに。こちらの仕事はかなりハードで、旭川を拠点に北海道内の10~20件のバラまき配達を行なう仕事でした。
半年くらい経ってだいぶ慣れてきた頃に、寝坊&延着をしてしまいました。この日のことは、今でもはっきり覚えています。土曜日の稚内便です。
0時に会社を出て途中の士別町で夜投げ(誰もいない所で荷物を降ろしていく)して、中間地点の音威子府(おといねっぷ)で睡魔が……。相当我慢したんですが、少し先の中川町でダウン。
当時は携帯電話もないので、トラックの時計の30分刻みで鳴るアラームを1時間セットしてベッドで寝ました。今考えてもなぜベッドで寝たのか……。シートを倒して寝ていたら、たぶん起きてたんだろうなって思いますね。
稚内に午前7時着なのですが、起きたのが午前6時半。どう頑張っても1時間半はかかる場所なので完璧アウト! しかも起きた時、状況がつかめなかった。「ここはどこ?」「家じゃないな!」「ヤバッ、何時?」。
とりあえず走りました。頑張って走りましたが、やはり到着は8時。しかもこの荷物は稚内海運が利尻島に持ってく荷物……。着いた時、荷受の方から一言、「船、出ちゃったんだよね」と寂し~く言われたのを強烈に覚えています。かえって怒られたほうが気が楽だったかも……。
あれからは延着は一度もしていません! いつも長距離の仕事をしているので出発時間は会社ではなく自分が決めるってのがあり、常に余裕をもって出発しています。だから寝坊はありますが、延着に至ることはないですね。