■時ならぬ降雪でトレーラ立ち往生 積込み先の人がスコップ片手に救援に/みゆ
長年の運転手生活の中で寝坊をしての延着は一度もありません。とはいえ「延着したことはないです」では話が続きませんので、予定外の雪で延着してしまった経験を話たいと思います。
当時、海コン運転手をやっていて、日替わりでアチコチの現場へと走っていた頃のことです。天気予報では降水(降雪)確率は低く、順番取りのために夜中に出発をし、向かっていた先は栃木県の北部。
途中から白いものがチラチラと降り始めてきたのを「どうせ積もらないだろう」と気にもとめずに走行を続けていたのですが、北へ北へと向かううちに雪は段々とひどくなります。早朝の県道は交通量も少なく、路面に積雪、そして凍結もしているような状態!
私が乗っていたクルマ(シングルといわれているヘッド)はスタッドレスどころか溝も減り始めている夏用タイヤのまま。それまで雪道らしい雪道の走行経験はあまりなく、一人でのチェーン装着にも自信はありませんでしたが、目指す現場は急勾配な坂の上! これは時間がかかってもチェーンを巻くしかないと、停められる場所まで移動。
幸い坂の手前は片側2車線の広めの道路で、左側の1車線は同じくチェーンを巻くトラックが数台停まっていたので少し心強い。
チェーンを巻く準備を始めると、近くに停めていたタンクローリの運転手さんが近づいてきて「このコンテナ何積んでるの?」。
この緊急事態に世間話をしている余裕はないのにと思いながらも「坂の上の○○に積み込みに行くので今は空車です」と答えた私は、予想外の話の展開に驚かされることに!
「空車のトレーラじゃ、チェーン巻いたってあの坂は上がれねぇよ。事故を起こしたり通行止めにしたりして周りに迷惑をかけるくらいなら、日が出るまでここで待機してたほうが良い」
そう言われてしまっては無理に動くわけにもいかず、会社(まだ寝てたらしい社長の携帯)に連絡。状況を説明すると、焦る私とは逆に「春までそこに居るか?」と呑気な様子。それでも荷主には連絡を入れておくからと許可をもらい、坂の手前で待機することに。
幸い雪は止み気温も上がってきたころ、社長から「今から迎えに行く」という電話があり、「横浜から迎えにくるのか?」と思っていたら、現れたのは積み込み先の方! しかもスコップ持参で……。
「少し遠回りになるけど裏側の道のほうが緩い坂だし、今ならチェーンなくても上がれると思う。会社から電話してもらうより、誘導したほうが早いので」と、指定時間を過ぎてしまっていることを怒るどころか、雪に埋もれていた(?)私を心配してくれていた様子。
迂回をして無事に到着してみたら、予定外の雪のために他のクルマもたどり着けていなかったようで、延着しているのにナゼか「よく来たね」と誉められ、菓子パンと牛乳の差し入れまでいただいてしまいました(笑)。
こんなイイ現場はたまたまなのでしょうが、数cm程度の雪で大騒ぎをしていては豪雪地域で活躍している方々に笑われてしまいそうですね。
■時間厳守の長距離ドライバー心得帳 体調管理にも気を使っています/ひろし
「時間との戦い」長距離ドライバーの仕事は、この言葉に尽きると思います。荷主や積み荷によって時間に余裕がある場合もありますが、魚、青果、宅配便、雑貨便などは時間設定がキツめの代表格でしょう。
僕の係わっている仕事で時間設定がキツいのは、バラ積みの宅配便や雑貨便になります。
例えば、関東で積み込みをして九州で翌日に降ろす仕事だと、夕方から5時間近くバラ積み作業を続けて、積み荷が満載になり出発するのが23時前後になります。満載になる頃には体力的にもヘトヘト。それから九州に向けて走って行くわけです。
時間のリミットは翌日の16時前後で、その時の運行内容にもよりますが、2カ所降ろしの場合もあり、荷降ろしの作業時間、移動時間も考えたら九州到着時間は昼イチ(13時)前後が理想的でしょう。
90km/hリミッター装着が義務付けられ、4時間以上連続運転禁止(4時間以内に30分の休憩を取る)を考えると、ヘトヘトな体にはかなりキツい運行になります。
しかし長距離ランナーとしての意地がありますので、天候(雪、台風、豪雨)や事故などで運悪く通行止め区間にハマってしまった場合を除き、意地でも時間までに到着はしますけどね。
そのためには運行前(積み込み作業に入る前)の体調管理は必須になります。時間が無いながらもしっかり仮眠を取り、深夜の運行に備える。家に帰宅できる場合は風呂にでもユックリ浸かって疲れを取る。
あとは気の持ちようです。絶対に延着しない! 必ず時間内に到着する! 長距離ドライバーとしての意地とプライドが一番大事だと思いますね。
荷物を積み込み、走り、目的地に到着して積み荷を降ろす。ひとたび運行が始まってしまえば、途中で体調を壊そうが、雪に阻まれようが、すべての責任は運転手にあります。
大変なことが多い仕事ですが、そのぶん各運行をやりきった時は、長距離ドライバーとして最高の瞬間ですね。
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