なぜかツルハシにスコップ
渋川を過ぎるころから路面に大型トラックの轍(わだち)ができていて、チェーンをしていてもそれにハンドルを取られるようになった。荷物を積んでいればトラックはそこそこ雪道に強いが、空荷の場合には頭が重い分だけ、スリップしやすくなる。ましてや悪いことに、長野市内で荷物を降ろしてきた際に、慌てていたのですっかり次のことを忘れ、積荷が極端な前荷(前寄りに固まること)になっていて、なおさらハンドルが取られやすくなっていた。それでもあっちこっちとフラフラしながら、国道17号から現場に入る道の入り口にまでさしかかった。
時間は午後9時半を回っていた。これからさらに凍結した道を走ることになるので念のためと思い、明かりのついていたガソリンスタンドで給油のついでに(本当は給油がついで)チェーンを締め直していると、そこのオヤジが話しかけてきた。
「いったいどこまで行くんだ?」と聞くので行き先を書いた伝票を見せると、「ああ、あそこか」と詳しい道を教えてくれた後で、「ちょっと待ってろ」と言ってガレージに入り、中からツルハシとスコップを持ってきて「帰りに放り込んでくれればいいから持って行け」と言う。何のことだかよく分からなかったが、工事現場に入る最後の曲がり角にたどり着いて、やっとそれを持たせてくれた意味が分かった。(山高一浩)