峠を越えると、そこは雪国だった
最初に入った印刷関係の荷物を運ぶ運送会社のときはともかく、そこから持ち込み(クルマごと専属でそこの仕事をすること)で行った建材関係専門の運送会社では、僕は毎年、一番最初にチェーンを巻き、一番最後までチェーンを持って走る運転手だった。
僕のような持ち込みの運転手はみんないわゆるサラリーマンだったので、長距離を走っても給料に変わりがない。普段なら長距離を走って荷物の積み下ろしが少ないほうがいいという運転手もいたが、冬期にチェーンを巻かなければならないようなところに行きたがる粋狂な運転手はほとんどいなかった。(中には毎度このコーナーにも登場するてっちゃんのように、「たまにはチェーンを巻いて走らなきゃ」という妙な運転手もいたが……)
運送会社のオヤジのほうも、自分の会社の運転手に行かせて事故にでも遭うよりは、下請けの運転手のほうが気が楽だと考えたのか、雪の時期の長距離の仕事は本当によく回ってきた。考えて見れば東京からちょっと地方に行こうと思えば必ず峠を越えなければならず(関越なら三国、信越なら碓氷東海道なら箱根といった具合に)、そこは冬期には雨が降ればすぐ雪になるのである。(山高一浩)