経験が物をいう仕事に自信と誇りを!! 誰も書かなかったセメントバルク車のリアルな一日【後編】

セメント工場での積み込み行程

 タンクシャシーと工場側のシュートを繋ぐ袋(腹巻状の布)はタンクシャシー側に着いていますので、その袋を工場側のシュートに繋いで、バンドでしっかり固定します。そして積み込みカードをカード読み取り機に入れて確認ボタンを押し、セメントの出るボタンを押すとセメントが出てきます。

 既定の量になると止まるボタンを押してセメントを止めます。そこで粉粒体独特の厄介な問題が発生するんですね。実はセメントって比重が定まってないんですよ。

 簡単に言うと、空気がたくさん含まれている状態ですと量に対して重さが軽くなります。逆に空気が少なくセメントが締まっている状態ですと、量に対して重さが重くなります。

 常にセメントを移動するのに空気を使って移動させている(セメント船から留萌SS・留萌SS内で本サイロから積み込みサイロまで)ので、堆積して時間が経っていないと軽いんですよ。これが朝一と午後とではトレーラ定量積載で1トン近く変わります(朝は前日から堆積しているので時間がたっていて締まっている)。

 このことを考えながら規定量を積みます。もちろん定量をオーバーすると伝票が出てこないので定量以下になるまでセメントを工場に戻さなきゃなりません。24年携わっている私でも10回に1回くらいはオーバーします。

 なぜギリギリまで積むかというと運賃が1トン何円なので規定量一杯に積んだほうが効率が良いからです。

 積み終わったら、またトラックスケールで実車重量を測定します。私の場合は規定量から500kg減までで妥協します。そして事務所で伝票処理をして、タンクシャシーとトラクタヘッドを繋げて納品先に向けて出発します。

納品先での荷降ろし行程

 納品先に着いたら、ミキサー車やタイヤショベル等の作業車に注意してセメントサイロに合わせてトラックを付けます。ここではトラックとセメントサイロの接続口はトラック側のデリバリーホースで繋ぐので、そんなにシビアに位置を気にしなくても問題ありません。

 まず工場側に伝票を持っていき、セメントサイロにセメントを入れて良いか確認してきます。そして確認を貰ったらデリバリーホースを指定のセメントサイロに繋ぎ、トラクタヘッドのPTOをON。コンプレッサーでタンク内エア圧力を高めます。

 エア圧力0.1MPaになると、タンク下の排出バルブを開けてセメントをサイロに移動させます。サイロにもよりますが、大体1トン=1分の割合でセメントが移動してきます。

 私のトラックの定量積載は22トンなので、工場に出入りの時間を合わせて約30分程度で荷降ろし作業が完了します。

 荷降ろし作業の最中にセメントサイロの満量警報機が作動すると、荷降ろし作業は中止で、サイロからセメントが減ってゆくのを待ってなければなりません。

 完全に荷降ろしが完了すると1本終了となるわけです。留萌SS引き取りですと1日2回から3回行程で、苫小牧SSですと1回目苫小牧SS引き取りで2回目留萌SS引き取り、多くても2回行程です。

運転以外にも緊張の連続

 このように積み込み&荷降ろしは1回に付き1時間程度なので、作業のほとんどが運転になります。ですが、「誤納」「大噴火」など、運転以外にも絶対に起こしてならない事故がたくさんあり、緊張の毎日です。

 また、現場納品などはいろいろな種類のサイロに対応しなければなりません。特殊な荷降ろしとして「バラ撒き」という直接トラックのデリバリーホースからセメントを噴射する方式があり、風向きによっては「大噴火」と同じ状況になります。

 なお運転に関しては、バラセメントは積んでから5~10分も走行すると落ち着いて締まるので、液体輸送のように揺れに関しては何の問題もありません。

 いま現在では生コン&コンクリート製品に代わる物がないので、まだまだ需要がなくなることはないと思います。責任のある仕事ですので、これからも自信と誇りを持って、この仕事に携わってきたいと思います。

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