妥協のない専用シャシー
「エコニック」では、この優れた乗降性を実現するためにシャシー自体を低床化、その上で、キャブをマウントするフロントオーバーハング部のフレームはさらに地面側へ引き下げた形になっています。
しかし、はしご車のベースシャシーとして使われるだけあって、「エコニック」のシャシーフレームはヘビーデューティに造られており、安易に寸法を縮めるような妥協がないこともわかります。ここは、さすがダイムラートラックと思わされるところで、また、キャブ付シャシーでなければ観察できないところでもあります。
これによって、東京・京都で導入された「エコニック1835L」(車両総重量18t・4×2駆動)べースの30m級はしご車は、先端屈折式、車いす対応型バケットというハイスペックを備えながらも、車両全高はわずか3140mmに抑えることができたのです。
3軸の大型車なのに小回りが利く!
展示車は車軸が前に1本・後ろに2本の3軸、(厳密にはタイヤは8本ついていますが)計6輪ですが、駆動するのは前から2軸目で、1軸目はもちろん3軸目も操舵可能となっています。そのため、大型トラックにもかかわらず小回りが利きます。これもはしご車用シャシーとして選ばれたポイントでしょう。
エンジンは、メルセデス・ベンツの「OM936LA」という354hp・7.7リッター直列6気筒インタークーラー付ターボエンジンで、6速オートマチックと組み合わせています。大型運転免許にオートマ限定はありませんが、2ペダルで運転できるようになっています。
ちなみに「OM936LA」は、三菱ふそうの大型トラック「スーパーグレート」が搭載する「6S10」エンジンと同型だったりもします。
展示車だけの仕様 海外ではさまざまな特装車も!
展示車はそれ以外にも、同じ2635L 6×2/4ENAをベースとした東京消防庁向け水槽車とはトランスミッションが違う(水槽車は12段機械式自動変速機。これはこれでオプション仕様で国内唯一)とか、パワー・テイク・オフ(PTO)装置を3基も装着しているとか、他にはないシャシー仕様(6×2/4ベースのはしご車向け?)となっています。この点でも日本では珍しいシャシーといえるかもしれません。
ワイ・エンジニアリングでは、「エコニック」を消防車以外にも、航空機地上支援車両(GSE)などのベース車としての採用に期待しているほか、2020年に発表されたバッテリーEVモデル「eエコニック」についても、導入を検討しているとのこと。
実は「エコニック」、海外では消防車やGSEはもちろん、塵芥車、ミキサ車、ダンプ、スキップローダー、冷凍車などの特装車、さらに都市内運行用セミトレーラの牽引車(セミトラクタ)として使われる例があるので、もしかしたら、日本でも思わぬニーズを呼ぶかもしれないですね。