新型FHの新機能を試す
UDトラックス本社工場内のテストコースで新型ボルボFHに試乗する機会を得た。
試乗車は、10tのダミーロードを積載した2軸トレーラをけん引するハイルーフのグローブトロッターキャブの4×2トラクタと、18t積載の3軸トレーラをけん引するスリーパーキャブ(セミハイルーフ)の6×4トラクタの2台。ともに540PSのエンジンとデュアルクッラッチ式の「I-シフト」の組み合わせである。
早速、新型の運転席に乗り込むと、12インチ液晶のメータークラスターや、ダッシュボード上に置かれた9インチのサイドディスプレイ以外は内装の大きな変更はないものの、トリムカラーのブラック基調の面積が増しこともあり、インテリアはさらに質感が増した印象を受ける。
存在感のあるタッチパネル式のサイドディスプレイだが、セミラウンド型のインパネ上にあり、運転席からの操作がしやすく、フロントウィンドウを妨げない位置に置かれているのも好印象だ。見直されたステアリングやインパネのスイッチ類も、わかりやすく機能的に配置されている。
従来モデルから継承された、FHの居住性の高さは圧倒的だ。とくにグローブトロッターキャブでは座席の上に立ち上がれるほど室内高が高く、肉厚のマットレスが置かれたベッドスペースも広々している。コックピッドというようり「部屋」と表現したほうが似つかわしい。
日本国内向けは、現在4×2にのみグローブトロッターキャブが設定されているが、6×4にも採用して欲しいというユーザーの声も多いという。
次にVDSの制御量を変更できるパーソナルセッティング機能を試してみた。調整できるのは直進中、コーナリング中のステアリングの重さ、自動センタリング機能の戻りの速さ、ステアリング補正機能(ワダチを走行した際などのキックバックを抑制する機能)の強弱の4項目である。
セッティングはサイドディスプレイで変更可能で、試乗中に弱強の両極を試してみたが、劇的に変わるというわけではなく「やや」変わるといった印象。ともあれドライバーの好みや状況に応じて使い分けができるようになったのは好ましい。
新型のバックミラーは欧州仕様と同様になったことで、フロントウインドウ越しに見ていた左ミラーは助手席側の窓越しに見ることに……。左ミラーを確認する際には、振り向く動作が生じるため、慣れは必要かもしれないが、ミラー自体の面積は広くなって視認性は向上している。
いっぽうでそれを補うように、新型には車両左前からトレーラ後端まで映る超広角レンズのコーナーカメラが備わり、死角となりやすい左折時や車線変更時の左サイドをサイドディスプレイで確認できるようになった。コーナーカメラの映像はデフォルトで左ウインカー操作と連動表示されるようになっている。
とくにトレーラでは、右左折時に通常のバックミラーでは見れない特有の死角があるため、カメラによる安全効果が期待できそうだ。
最後に、新型はパワートレーンの変更はないが、あらためて6×4トラクタでボルボの動力性能を試した。
手のひらサイズになったI-シフトのセレクターを「A」の位置へ入れ、アクセルを強めに踏み込むと、13Lエンジンらしく低速から力強く加速する。
デュアルクラッチの恩恵で息継ぎ(変速の間)もほとんど感じさせない。18tのダミーウェイトを積んだ状態でも、もたつきを感じさせないのは「さすが」の一言である。
VDSがもたらすステアリングの軽さと相まって、好みはあるだろうが乗用車的に運転できるのがボルボ車の魅力だろう。いずれにしてもFHは、国産車とは一線を画す、別格の存在感であった。
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